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【書評】大竹聡「五〇年酒場へ行こう」(新潮社)-東京中を東へ西へ。老舗酒場で楽しく飲めば、今日も今日とて二日酔い

最近は、もっぱら家で飲んでいる。お酒のことだ。職場が、都内とはいってもちょっと辺鄙なところにあって、繁華街に出るのが面倒くさいというのが主な理由である。

それでも、月に2回くらい、仕事終わりに電車を乗り継いで飲みに行くことがある。私の場合は、新橋あたりをメインに飲むことが多いが、上野や池袋、新宿あたりまで足を伸ばすこともある。

五〇年酒場へ行こう

五〇年酒場へ行こう

 

 

だが、本書「五〇年酒場へ行こう」の著者大竹聡さんは、われわれのような軟弱な酒飲みのは全然違う。毎日のように酒を飲む。それも、「軽くいっぱい」なんてことはない。いや、最初はそのつもりなのかもしれないが、ふたを開ければはしご酒。2軒、3軒と飲み歩き、気づけばゴゼンサマ。当然のように二日酔いなのである。

「五〇年酒場へ行こう」は、そんな大竹さんが、新潮社の「新潮45」と「波」という2つの雑誌をまたいで連載してきた老舗酒場探訪エッセイを1冊にまとめたものだ。埼玉・東松山のやきとりからスタートし、生レモンサワー発祥の地・祐天寺の「ばん」、厚木ではB級グルメのチャンピオンにも選ばれたことのあるシロコロホルモンでビールをグイグイとやる。根岸の老舗「鍵屋」、千住の名物居酒屋「千住の永見」に煮込みの名店「大はし」といった店に足を運んだかと思えば、著者もうひとつの趣味であるところの競馬、競輪に興じて、なおかつ昔ながらの居酒屋で祝杯と行こうじゃないかと足を運ぶは府中に京王閣。そして、見事に撃沈しては、悔しい酒をあおる。

冷静になって読めば、ただただ呑兵衛たちが集まって、東京や近郊の居酒屋に繰り出してはただただ酒を飲み歩くだけの話だ。

この呑兵衛たち、著者を中心に基本メンバーは新潮社の編集者やカメラマンが時と場所に応じて喜々として集まっている。目指す老舗酒場に繰り出し、生ビールをプハーッとやっつけて店自慢の肴に舌鼓を打つ。名物ヤキトンにどじょう鍋、千住の永見で頼むのは揚げたてアツアツの千寿揚げ(自家製のさつまあげ)だ。ビールにホッピー、チューハイに日本酒が次々と呑兵衛の喉の奥へと消えていく。

飲んで食べて語らって笑う。そんな“いい大人”たちの酔態が記されているのを読んでいるだけで、何やら自分も楽しくなってくる。

これって、私もそれなりにお酒を嗜んで、たまには居酒屋さんで飲んだりするから、同じ酒飲み(といっても本書の飲兵衛さんたちと私ではレベルが全然違うけれど)として共感するところがあるから楽しく感じるのだろう。

なら、まったく下戸の人が読んだらどう感じるのだろうか?

「酔っ払いってイヤねぇ~」とやっぱり思うのだろうか?

それとも、呑兵衛たちの狂態を微笑ましく見守ってくれるのだろうか?

他人の目が気になる呑兵衛たちは、案外そういうところを気にしているのである。

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