タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

温又柔「来福の家」(白水社)-どこにでもある恋人たちの風景や家族の風景。でも、そこには大きく横たわる《台湾》が存在していた。

来福の家 (白水Uブックス)

来福の家 (白水Uブックス)

 

 

縁珠と麦生は恋人同士。大学の中国語クラスで出会った。どこにでもいる普通のカップルだ。

温又柔「来福の家」には、表題作の「来福の家」とすばる文学賞佳作を受賞したデビュー作「好去好来歌」の2編が収録されている。著者の温又柔さんは、台湾で生まれ日本で育った。そうした自分のルーツを探し求めて著した「台湾生まれ、日本語育ち」は第64回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞している。

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「KanKanPress ほんのひとさじvol.5~特集まどろみ」(書肆侃侃房)- #書肆侃侃房15周年 『PR誌』と侮るなかれ。充実の内容は読み応え満点!

KanKanPress ほんのひとさじ vol.5

KanKanPress ほんのひとさじ vol.5

 

 

書肆侃侃房15周年記念プレゼント企画に当選して5冊の本をいただいた。

送られてきた中に小冊子が1部同封されていた。書肆侃侃房のPR誌がこの「KanKanPressほんのひとさじ」である。

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【イベント】第三回日本翻訳大賞授賞式に行ってきました!(遅ればせの参加レポート)

『翻訳者に光を!』ということで2014年に企画がスタートした「日本翻訳大賞」も今回で第三回となったのですね。今回は、最終選考候補作品にはじめてヤングアダルト作品が選ばれたり、大賞受賞作に英語圏からの翻訳作品が選ばれたりとこれまでとは違うところもあって、過去2回同様、むしろ過去最高の大賞になったと感じました。去る4月23日に開催された『第三回日本翻訳大賞授賞式』に今年も参加してきましたので、参加報告させていただきます。

 

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カレン・ジョイ・ファウラー/矢倉尚子訳「私たちが姉妹だったころ」(白水社)-両親と兄と双子の姉。でも、ローズマリーの家族はありふれた普通の家族ではなかった

私たちが姉妹だったころ

私たちが姉妹だったころ

 

 

『訳者あとがき』から引用する。

本を読み始める前に「あとがき」をぱらぱらめくってみる癖のある読者へ。綿密に練り上げられたこの小説のサプライズを作家の意図どおりに味わいたい方は、どうか先を読まずに本文にもどっていただきたい。サプライズは本編の第二章の中ほど、正確に言えば八九ページで明らかになる。

カレン・ジョイ・ファウラー「私たちが姉妹だったころ」は、主人公である《私》(ローズマリー・クック)が自らの家族について語る物語だ。

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村田沙耶香「きれいなシワの作り方~淑女の思春期病」(マガジンハウス)-芥川賞作家がこじらせた大人の女性の思春期病。でも、それこそが作家の創作の原点なのかもしれない

きれいなシワの作り方~淑女の思春期病

きれいなシワの作り方~淑女の思春期病

 
きれいなシワの作り方?淑女の思春期病

きれいなシワの作り方?淑女の思春期病

 

 

この本は、書評サイト「本が好き!」を通じて版元のマガジンハウス様よりご献本いただきました。ありがとうございます。

www.honzuki.jp

ある日、「本が好き!」の運営スタッフさんから、

「きれいなシワの作り方~淑女の思春期病」について、マガジンハウス担当者から指名献本の要望がありましたが受けますか?

という内容のメッセージが届いた。

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フラワーしげる「ビットとデジベル」(書肆侃侃房)-#書肆侃侃房15周年 はじめて「歌集」というものを読んだ。短歌とはけっこう自由なものだと知った。

ビットとデシベル 現代歌人シリーズ

ビットとデシベル 現代歌人シリーズ

 
ビットとデシベル (現代歌人シリーズ)

ビットとデシベル (現代歌人シリーズ)

 

 

書肆侃侃房15周年記念プレゼント企画に当選していただいた中の1冊。「歌集」というものを読むのはこれがほとんど初めての経験になる。

《短歌》というと、万葉集とか百人一首とかの学校の古典の授業で習ったものを思い浮かべる。『五・七・五・七・七』の31文字で表現される《和歌》というやつ。その印象のためか、どうにも《短歌》というものには苦手意識があって、現代歌人も含めて「歌集」という作品集を手にとることはなかった。現代歌人としてもっとも有名な穂村弘さんでさえ、「エッセイ集」は楽しく読んできたが「歌集」は読んだことがないし、かつて一世を風靡した俵万智さんの「サラダ記念日」も読んだことがない

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ジェイムス・クリュス/森川弘子訳「笑いを売った少年」(未知谷)-世界が不穏な方向に向かっていると感じられる今、「笑うことができる」という幸せの意味を改めて考えてみたいと思う

笑いを売った少年

笑いを売った少年

 

 

子どもの笑い声は、周りを明るく元気にさせてくれる魔力を持っている。

ジェイムス・クリュス「笑いを売った少年」の主人公ティム・ターラーは、「最後にシャックリがついてくる、だれの心をも明るくしてしまうとびきりの笑い」を持っていた。

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