こんな夢を見た。
この書き出しが印象深い夏目漱石の短編集が「夢十夜」です。久しぶりにKindle無料版で再読(再々読あるいはそれ以上かも)してみました。意外だったのは、10篇全部が「こんな夢を見た」で始まるものと思い込んでいたんですけどね、実際には、第一夜、第二夜、第三夜、第五夜の4篇だけで、その他6篇はそれぞれに異なる書き出しで始まっていたんですね。そんな思い込みも、やはりこの書き出しの印象が強く残っていたからでしょうか。
続きを読む「菜食主義者」というタイトルから、ベジタリアンを主人公にしたストーリーが展開するのだろうと考えてはいけない。この本は、そんなに生易しいものではなかった。
韓国の女流作家ハン・ガンの「菜食主義者」は、「菜食主義者」、「蒙古斑」、「木の花火」の3篇で構成される連作集である。物語全体の中核に存在するのが、ある日突然肉食を拒否するようになった女性ヨンヘであり、「菜食主義者」は彼女の夫の視点、「蒙古斑」は彼女の義理の兄の視点、「木の花火」は彼女の姉の視点で描かれる。
続きを読む金田一耕助ファイル3 獄門島<金田一耕助ファイル> (角川文庫)
「獄門島」-実に強烈なインパクトのタイトルだと、改めて感じる。瀬戸内海に浮かぶ絶海の孤島という舞台設定と「獄門島」というネーミングの相乗効果が、本書のおどろおどろしい雰囲気を醸成しているのだと感じる。
続きを読む小説にリアリティを求めるかファンタジーを求めるか。好みは読者ひとりひとり異なる。徹底してリアルな設定や描写を好む読者もあるし、現実からの逃避を求めて非現実的なファンタジーを求める読者もあるだろう。
金子薫「鳥打ちも夜更けには」は、リアルとファンタジーの間のどちらかというとファンタジーよりに位置する物語だ。
続きを読む2016年11月20日、アイルランドの作家ウィリアム・トレヴァー氏が亡くなった。享年は88歳。ノーベル賞候補とも言われていた短編小説の名手の訃報に心より哀悼の意を表したいと思う。
ところで、私はこの短編小説の名手である作家の熱心な読者ではない。そんな不熱心な読者である私が、唯一読んでいたのが本書「アイルランド・ストーリーズ」である。
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