タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

コナン・ドイル/千葉茂樹訳、ヨシタケシンスケ絵「コナン・ドイルショートセレクション 名探偵ホームズ踊る人形」(理論社)-名探偵シャーロック・ホームズが活躍する短編から厳選された作品を収録したホームズ入門書

www.e-hon.ne.jp


コナン・ドイルショートセレクション 踊る人形 (世界ショートセレクション)
Amazonで購入)


名探偵ホームズ踊る人形 (世界ショートセレクション コナン・ドイルショートセレクション) [ アーサー・コナン・ドイル ]
楽天ブックスで購入)

 

「名探偵ホームズ」シリーズは、おそらく多くの読書好きが子どもの頃に手にしたことのある作品ではないだろうか。

名探偵ホームズシリーズ
怪盗ルパンシリーズ
少年探偵団シリーズ

学校の図書室にズラリと並んだ本を、片っ端から借りて読む。「ぼくはホームズ!」「おれはルパン!」と友だち同士でどちらが好きか、どちらが先に読み終えるかを競いあった思い出もある。いまの子どもたちも同じだろうか。

本書は、千葉茂樹さんが数あるホームズ物の短編の中から選んだ3つの作品とワトソン博士を主役としてユーモアあふれるショートストーリー1編が収められている。理論社が刊行している『ショートセレクションシリーズ』の中の1冊である。表紙、各短編の扉絵を描いているのはヨシタケシンスケさん。ヨシタケシンスケさんは、さらに『踊る人形』のあの暗号文も描いている。

収録作品は、

踊る人形
まだらの紐
黄色い顔
ワトソンの推理修行

の4編。いずれもホームズシリーズの中では人気の作品だ。読んだことがあるという方も多いだろうし、読んだことがなくても内容を知っているという方もいるだろう。なので、それぞれの作品について、あらすじを説明する必要はないと思う。

56編もあるホームズ短編作品の中から、この3編を選んだ理由について翻訳の千葉茂樹さんは「ずいぶん悩みました」と書いた上でこう説明している。

『まだらの紐』は、自身が子どものころに読んだときの衝撃が忘れられず、ドイル自身がホームズ物の短編の中で第1位にあげていること。
『踊る人形』と『黄色い顔』については、ホームズのしくじりという観点で選んでいること。

どの短編が選ばれたとしても納得なのだが、『踊る人形』と『黄色い顔』がいずれもホームズのしくじりが描かれていたとは考えたことがなかったので、おもわず「なるほど!」と膝を打った。どちらも事件は解決しているのだが、『踊る人形』ではホームズらしからぬ決断の遅れがあったし、『黄色い顔』では真相を見誤った。確かに、どちらもホームズのしくじりだ。

なぜ、しくじりという観点で作品を選んだのだろう。その理由については、あとがきにも書かれていない。私なりの解釈として書けば、完璧であるはずのホームズが失敗するという“人間性”を見せたかったのではないだろうかと考える。

いかに天才的なシャーロック・ホームズであっても、一瞬の判断の遅れや認識のズレによって失敗を起こす。ホームズだって失敗するんだから、私たちが失敗するのも当たり前のことなのだ。でも、その失敗を繰り返さないために、どうすればいいのかを考えることが大事だということに気づかせる。本書にはそういう狙いがあるのかもしれない。個人的で勝手な深読みだけれど、そう思った。