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ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

彼女の過去に何が起きたのか。その真実が明かされるラストに驚愕せよ!-ルネ・ナイト「夏の沈黙」

書評

人として生きてきたからには、誰だって過去にひとつやふたつの後ろめたい出来事があるはずだ。いや、もちろん聖人君子の如く清く正しく生きてこられた方もおられるでしょうが。

夏の沈黙

夏の沈黙

 
夏の沈黙

夏の沈黙

 

ルネ・ナイト「夏の沈黙」に描かれるキャサリンが背負う過去は、彼女自身だけでなく、彼女の家族をも巻き込む重い過去だ。彼女は、その過去を自らの胸のうちに深くしまいこみ、封印したはずだったのだ。それなのに、ある1冊の見知らぬ本がすべてを白日の下にさらけ出そうとする。そして、次第に、キャサリンの日常は崩壊していく。

東京創元社プルーフ版で発売前に読ませていただく機会を得た作品。読み始めは、割りとオーソドックスなタイプのミステリーという印象を受けたが、読み進めるにつれて、物語世界にグイグイと引き込まれてしまった。

今をときめくバリバリのテレビディレクターである主人公。仕事も順調、家庭も円満。何も問題のないはずの彼女の生活が、1冊の本によって激変する。過去を必死に隠そうとするあまり、崩壊していく様子は胸をギュッと締め付けられるような緊張感と、キャサリンに対する嫌悪感がないまぜとなり、良い進む手を止めることができなくなる。

追い詰められるキャサリンと対極に位置するのが、元教師のスティーブン。彼こそが、キャサリンにあの本を届けた人物だ。なぜ、彼はキャサリンを追い詰めようとしているのか。それが、本書の肝となる部分である。スティーブンが抱える大きな苦悩こそが、彼の行動の原動力である。そして、苦悩が大きすぎることがラストに巻き受ける衝撃の真相をよりインパクトの強いものとしているのである。

すべてが明らかとなった後、キャサリンとスティーブンがそれぞれどのような結末を迎えることになるのか。そこにあるのは、行き着くところまで行き着いた悲劇なのか。それとも、すべてを受け入れて得られる安寧なのか。それは、是非ご自身の目で確かめてほしいと思います。