タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

そして、物語は完結する-ダン・シモンズ「エンディミオンの覚醒」

全4巻に及ぶ長大なハイペリオンシリーズの最終巻である。シリーズの大団円を迎え、これまでに示されてきた謎の大部分がクリアになっていく。

エンディミオンの覚醒〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオンの覚醒〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

 
エンディミオンの覚醒〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオンの覚醒〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

 

 前作「エンディミオン」で艱難辛苦の末にオールドアース“地球”に転位したアイネイアーたちは、4年後再びパクス支配領域への帰還を開始する。ロール・エンディミオンは、カヤックで川を下りながら転位を繰り返し、かつて辺境の惑星に取り残してきた領事の宇宙船を回収する。その後、ホーキング航法で目的に天山に向かったロールは、大人の女性に成長したアイネイアーと再会する。一方のパクスは、アイネイアーを追って攻撃をかけるが、パクスからはかつてアイネイアー追跡のリーダーであったデ・ソヤ神父大佐が反旗を翻し、混乱を生じていた。アイネイアーは、その間隙を縫ってパクスの総本山であるバティカンを目指す。

これまでに示されてきた様々な謎の答えが明らかになっていくが、その中心にあるのは時間の概念だ。要するに、時間を超越することで、すべての謎に回答を与えているのである。それに対してどう評価するかが、本書の評価のポイントになると考えられる。

作品の質としては、シリーズ全体を通じて平均以上のレベルをキープし続けていることに、素直に評価を与えたい。しかしながら、キープにとどまってしまったことは残念だ。本シリーズは、第1作のハイペリオンが、非常にグレードが高く、読む者の度肝を抜くような作品であったため、そこから先、特にエンディミオンシリーズに入ってからの展開にはやや不満を覚える。過度な期待かもしれないが、そのくらいの力量はあるはずなので、もう少し気合いを入れて欲しかったところだ。