著者は、神田神保町、有楽町、池袋、その他全国に展開する某大型書店で働く書店員。著者を招いて行うトークイベント『新井ナイト』や直木賞発表のタイミングに合わせて自分が一番面白いと思った小説に授賞する『新井賞』などの企画を展開するなど、いわゆる〈カリスマ書店員〉である。
新井見枝香の初の著作となる本書は、彼女が書店員であるということを考えれば、「書店で働くことの楽しさや大変さ」であったり、「『新井ナイト』や『新井賞』の誕生秘話」や「お気に入りの作家のこと」、「本が売れない時代に対する憂慮」みたいな、書店回り、本回りの話題を中心にしたエッセイ集なのだろうと思うだろう。
はっきり言っておくが、そういう“真面目”な話を期待してはいけない。
本書の目次をあげておく。
#1 会社に向いてない
#2 結婚に向いてない
#3 大人に向いてない
#4 たまには向いてることもある
#5 生きるのに向いてない
目次からは、書店も本も作家も、おおよそ本に関わる話は見えてこない。そして、実際に読んでみると、「オイオイ、本の話はないのか」とひたすらツッコミ続けることになる。ま、半分も読み進めればツッコミ続けるのにも飽きてくるので、そこからは普通に『アラフォー独身女性のイタい日常エッセイ』として楽しめばよいだろう。
なので、この本を読んでなにか面白そうな本が紹介されていないだろうかとか、次に書店を訪れた時にどこをポイントに回ればいいだろうか、といった読書や書店巡りの参考となる何を得ようとは考えない方がいい。
「だったら、この本を読む意味がないんじゃないか?」
確かにそうかもしれない。著者が書店員(しかも、かなり有名)だからという理由でこの本を読むのはオススメしない。でも、ちょっと変わったエッセイとして読むには面白い内容だと思う。構えて読むような堅苦しい本じゃない。仕事に疲れたときとか、重厚長大や重いテーマの小説を読んでいるときの気分転換などに、ちょっと気楽に適当なページを開いて読む。この本は、そういう本なんだと思うし、もしかしたら著者も、「メインの読書の隙間にちょっと気軽に開いてみて」という感じで書いているのかもしれない。