タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

海外文学

ディストピア小説の代表的傑作。焚書による思想の弾圧が生み出す悪夢-レイ・ブラッドベリ「華氏451」

本書「華氏451度」はブラッドベリの代表作のひとつである。近未来社会を描いているためSFとして分類されているが、内容的には極めて社会的であり、オーウェルの「一九八四年」にも通じる管理社会の恐怖を描いた作品であると思う。 華氏451度〔新訳版〕 (…

シュールとはこういう作品を指していうのだな-アルベルト・モラヴィア「薔薇とハナムグリ~シュルレアリスム・風刺短篇集」

「シュールだねぇ~」なんて言葉をよく聞く。私たちの耳に一番ポピュラーなのは、昔でいえばツービート、最近ならば爆笑問題あたりの、世間とか政治とかを皮肉ったブラックユーモア系の漫才とかコントに対する評価だろうか。 世間的には、単なる悪口であって…

1944年ベルリンを舞台にユダヤ人の元刑事とナチス上級将校のコンビが挑む猟奇殺人事件の謎-ハラルト・ギルバース「ゲルマニア」

この本、読み終わってから少し寝かせてしまいましてね。特に理由はないのですが、他の本を読んでたり、8月に入って戦後70年で戦争関連の本を集中して読んでいたりしたもので。 ということで、改めてレビューしていきます。 ゲルマニア (集英社文庫) 作者: ハ…

あるひとりの男の生涯。波乱はない。けど、平凡でもない人生が心に深く染み入ってくる−ジョン・ウィリアムズ「ストーナー」

私は、この物語を品川にあるカフェで読み終えた。 ストーナー 作者: ジョン・ウィリアムズ,東江一紀 出版社/メーカー: 作品社 発売日: 2014/09/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (18件) を見る 最後の文章を読み終えた瞬間、私は深く息を吐いた。そ…