書肆侃侃房15周年記念プレゼント企画に当選して5冊の本をいただいた。
送られてきた中に小冊子が1部同封されていた。書肆侃侃房のPR誌がこの「KanKanPressほんのひとさじ」である。
こういうPR誌は、受け取った側も普通ならば冊子をパラパラとめくってみて「ふ~ん」と読み飛ばすか、好きな作家がエッセイを寄稿しているのを見つけてそれだけ読んだりする程度でしかなく、内容を通読したり熟読したりする読者はあまりいないだろう。同封した書肆侃侃房も「多少なり目を通してもらえれば」くらいの意識だったのではないかと思う。
ところが、「本が好き!」のレビュアーは違った。
まず、この「ほんのひとさじ」が書籍データとして登録できることにレビュアーの風竜胆さんが気づいた。そして、最初のレビューをアップしたのだ。
こうなると当然あとに続くものが出てくる。かもめ通信さん、ikuttiさんとレビューが続いたのだ。
となれば、「書肆侃侃房15周年記念読書会」を主催する私としてもあとに続かないわけにはいかない。さっそく読み始め、こうしてレビューしているわけである。
私が(というか私達が)いただいた「ほんのひとさじ」は第5号で、特集は「まどろみ」である。「まどろみ」をテーマにして短歌、エッセイ、ショートショートが掲載されている。
まずは「まどろみ」をテーマにした短歌19首から本書は始まり、次に37人の歌人、作家、ライターがそれぞれに「まどろみ」をテーマに寄稿したエッセイやショートショートが続く。その中で印象に残ったものを紹介したい。
ひとつめは大前粟生「歯医者さんの部屋」だ。「たべるのがおそいvol.2」に掲載された「回転草」の面白さに驚愕し、個人的には今一番まとまった作品を読みたいと切望している若手作家である。「歯医者さんの部屋」は、歯の治療で麻酔をかけられた《私》が体験する不思議な経験が描かれる。わずか2ページのショートショートなのだが、作家の創造力が読者の想像力をかきたてる作品で強く印象に残る作品だった。あまり言葉が過ぎると嘘くさくなるかもしれないが、マジですごい作家だと思う。
もうひとつ印象に残ったのは中野善夫「マドローミ嬢の生活と意見」だ。著者がマドローミ嬢に導かれてたどり着いた3つのドア。著者の選択肢は正しかったのだろうか。もし、自分がマドローミ嬢に出会ったら、正しい選択ができるだろうか。微睡みとはまさに夢の中である。
正直読み始めるまでは「しょせんはPR誌だし」と期待値は低かった。だけど、実際に読んでみるとこれが意外と面白かった。寄稿している歌人や作家の作品をもっと本格的に読んでみたいと思わされたところも少なくなかった。
「書肆侃侃房、おそるべし!」
そんな印象を与えるPR誌だった。
【追記】
書肆侃侃房15周年記念プレゼント企画だが、当選者には希望した5冊の書籍とともに本誌が送られてきたわけだが、なんと落選した応募者にも希望した書籍の中から書肆侃侃房側で選んだ1冊がプレゼントされたのこと。書肆侃侃房、なんて太っ腹なんだ!
これからも、「本が好き!」に献本をよろしくお願いします!!