ガタガタ書評ブログ

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地方発→全国区。大泉洋というキャラクターの魅力-大泉洋「大泉エッセイ~僕が綴った16年」

いまや全国区のタレントになった“北海道ローカルタレント大泉洋が、デビュー間もない頃から約10年ほどにわたって各種雑誌媒体で書いてきたエッセイをすべて収録し、かつ一部のエッセイについては大泉自身が執筆当時を振り返って一言コメントを書いているという、まさに大泉洋の足跡を辿れるエンサイクロペディアのようなエッセイ集である。

北海道ローカルのバラエティとしてスタートし、ほぼ全国的な人気を博するようになった伝説の番組「水曜どうでしょう」のレギュラーとして、大泉洋は大学在学中にテレビの世界に登場する。彼は一躍北海道ローカルのスターへと成長。その後は、北海道を地盤として様々なバラエティ(基本はすべて北海道の番組である)に出演するようになり、人気を不動のものにしていく。

もともと大泉洋の本業は俳優業である。大学の演劇サークルの仲間と立ち上げた劇団「TEAM NACS」は、現在では大泉洋の人気が広がるのに合わせて人気劇団となり、公演チケットの入手も困難になるほどだ。NACSの人気が拡大することで、大泉洋以外のメンバー(森崎博之安田顕、戸次重幸、音尾琢真)も全国区の知名度を得るようになってきている。

そんな人気者大泉洋のエッセイであるが、文章に関してはあまり得意な印象は受けない。「水曜どうでしょう」や「おにぎりあたためますか」で見せるように大泉洋は瞬発力のタレントである。その場の空気を敏感に察知し、共演者の言動に素早く対応して発する一言には、大泉洋がここまでの人気を得ることになった要因を感じ取ることができる。そういう意味で、彼は瞬発力のタレントであり、まさにテレビバラエティ向きのタレントなのである。

瞬発力のタレントだけに、エッセイのようにじっくり読みこんでしまうものだと、その魅力が半減してしまうように思うのだ。瞬発力のタレントが面白いのは、視聴者に考えるスキを与えないところにある。文章という記録で残ってしまうエッセイは、読みながら読者に考える余地を与えてしまうため、「冷静に読むと案外つまらない」という感想に陥る危険性がある。

ただ、本書の巻末に収められている2013年現在でのエッセイは読ませるものがあった。特に、自身を世に出すきっかけとなった「水曜どうでしょう」に関する文章だ。この文章が読み手の心に響いてくるのは、受けを狙って書かれたものではなく、大泉自身の「水曜どうでしょう」という番組とスタッフである藤村D、嬉野Dや共演者であり事務所の社長(当時。現在は会長)でもあるミスターこと鈴井貴之への想いが、真面目に書かれているからだと思う。

そういう意味で大泉洋のエッセイが不発なのは、若気の至りもあるかもしれないが、どうしても“受け狙い”を試みようとしているからかもしれない。大泉洋自身の文章力は高いと思う。なので、私は大泉洋が書く小説を読んでみたいと思う。実際、彼が劇団のために書いた脚本は評判がよく、テレビドラマ化もされている。そうしたフィクションの世界を作り上げる試みを、大泉洋にはぜひチャレンジしてほしいと思う。