ガタガタ書評ブログ

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物語の始まり-ダン・シモンズ「ハイペリオン」

壮大な物語のはじまりは、たいていの場合、ひっそりとしたものだ。「ハイペリオンの没落」、「エンディミオン」、「エンディミオンの覚醒」と四部作をなす一大叙事詩の幕開けも、決して派手派手しいものではない。

ハイペリオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

 
ハイペリオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

 

人類が宇宙への進出を果たした28世紀。連邦の“領事”は、FATライン通信によるCEOの指示を受ける。それは、領事を含む七名で辺境惑星ハイペリオンを訪れ、彼の地で起こりつつある“時間の墓標”の謎を解明せよというものだった。しかし、その七名の中には、連邦と交戦状態にある宇宙の蛮族アウスターのスパイが混じっているという。領事に課せられた使命は、その裏切り者を見つけ出すことでもあった。折しもアウスターはハイペリオンへの侵攻を開始しており、事態は猶予を許さない状況にある。しかも、ハイペリオンには時を超越する謎の殺戮者シュライクがいる。領事は、他の六名(神父、詩人、軍人、学者とその娘、私立探偵、森霊修道士)とともに、ハイペリオンを目指す。

本書で示されるのは、ハイペリオンへの派遣される七名の物語だ。彼らは、それぞれにハイペリオンと因縁浅からぬものをもっている。領事は、かつてハイペリオンを統治していた。神父は、かつて尊敬していた神父をハイペリオンで亡くした。詩人は、かつて自分が仕えたビリー王との因縁をもつ。軍人は、夢に現れる謎の美女がハイペリオンに棲む殺戮者シュライクと関連づけて考えており、学者は、ハイペリオンの遺跡調査に赴いた娘が時空のうねりの中で原因不明の若返り病に罹ってしまった謎を解明し、娘を救いたい。探偵は、依頼人であり恋人になってしまった死んだサイブリットの意識を自らの中に共有し、彼が目指していたハイペリオンを目指す。

彼ら一人一人が語る物語が、本書のすべてだ。そして、謎は謎として、次作の「ハイペリオンの没落」へとつながっていく。