タカラ~ムの本棚

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スティーグ・ラーソン/ヘレンハルメ美穂、岩澤雅利訳「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女(上/下)」(早川書房)-#はじめての海外文学 このシリーズの最大の魅力はなんといってもリスベットである!

 

 

「ミレニアム」シリーズは、スウェーデン発のミステリーシリーズであり、本書「ドラゴン・タトゥーの女」は、その第1部になる。著者のスティーグ・ラーソンは、ジャーナリストとして活動してきた人物で、本書の主人公のひとりミカエルは、著者自身を投影しているのかもしれない。

雑誌『ミレニアム』の編集責任者であるミカエル・ブルムクヴィストは、実業家であるヴェンネンストロムの不正を記事にしたことで、彼から名誉毀損で訴えられ有罪判決を受ける。ミカエルは『ミレニアム』から離れるが、その彼のもとに、大物実業家であるヘンリック・ヴァンゲルからある依頼が舞い込む。それは、前に失踪した娘ハリエットの行方を探してほしいというものだった。ハリエットは、ヴァンゲルが住む島から突然姿を消した。島に渡るにはたった一本の橋を使うしかない。しかし、彼女が失踪した日、誰も彼女がその端を渡っていった姿を見ていなかった。つまり、彼女は閉ざされた孤島から忽然と姿を消したのである。

ハリエット失踪事件の謎を調べる中で、ミカエルはひとりの女性と女性とタッグを組むことになる。相棒となったのはリスベット・サランデルという調査員。彼女は、見た目は少女のように華奢だが、凄腕のハッカーであった。そして、壮絶な過去をもった女性でもあった。リスベットと仕事を進める中で、ミカエルは次第に彼女に惹かれるようになっていく。

全世界で大ベストセラーとなったミレニアムシリーズの記念すべき第1部にあたる本書は、スティーグ・ラーソンのデビュー作にあたる。「ドラゴン・タトゥーの女」は、およそ40年も前に失踪し、すでに死んでいるとさえ思われている少女の行方を探すように依頼されたジャーナリストが、凄腕調査員とコンビを組んで調査にあたるストーリーである。閉ざされた孤島で起きた謎の失踪事件。その謎が明らかになることで浮かび上がってくる様々な事実や事件。そこに切り込んでいくミカエルたちの調査の足跡は、ハードボイルド小説の雰囲気を有した本格ミステリ小説である。

物語として面白く、時間を忘れて作品に没頭できるところも魅力的だが、やはりいちばん印象に残るのはリスベット・サランデルというキャラクターだ。小さく華奢な身体で14歳くらいの少女のように見える彼女だが、その能力はきわめて高く、いとも簡単に調査対象のコンピュータシステムをハッキングして情報を取得する。全身にタトゥーを入れ、ピアスで覆われ、大型バイクを乗りこなすリスベットは、見た目としても能力としても魅力的なキャラクターだ。そして、複雑な過去も背負っている。

ハリエット失踪事件の真相が明らかになったとき、ミカエル、リスベット、そして謎の鍵を握る人物との手に汗握る攻防がはじまる。その展開はまさにジェットコースターのように一気呵成に読ませる。上下巻の長編小説だが、その長さを感じさせないエンタメ度満点の作品である。はじめての海外文学としてチャレンジするには手に取りやすい作品だと思う。