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【書評】栗原康「村に火をつけ、白痴になれ-伊藤野枝伝」(岩波書店)-あまりに激しい伊藤野枝の28年にわたる短い戦いの人生

冒頭に、地元の郷土史家である大内士郎氏から聞いたというこんなエピソードが紹介されている。

およそ十数年前に、伊藤野枝の生まれ故郷である福岡県糸島郡今宿村(現在の福岡市西区)でテレビの取材があった。もちろん、伊藤野枝に関する取材だ。野枝と同世代の老婆がまだ存命とのことで、そのおばあさんにインタビューすることになったのだが、話を聞こうとしても彼女は「そんなひとはしりません」の一点張り。結局、取材はできなかった。

その夜のこと、老婆は大内氏の家にやってきた。

昼間はおとなしかったおばあさんが、いきりたって大声をあげている。「おまえはなにを考えとるんじゃあ!テレビなんかにうつったら、世間さまに、ここがあの女の故郷だとしられてしまうじゃろうが!」どういうことだろう。大内さんがけげんそうな顔をしていると、おばあさんはこうさけんだという。「あの淫乱女!淫乱女!」

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

 
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