タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「カレーライフ」竹内真/集英社-5人のいとこたちが子どもの頃に交わした約束。王道の成長小説であり、読むとカレーが食べたくなる飯テロ小説

 

 

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「カレーライフ」と「カレーライス」

カレーライスが好きだ。おそらく、ほとんどの人が好きな料理のトップ3にあげるに違いない。もちろん嫌いという人もいるだろう。ちなみに私の亡くなった父はカレーライスが嫌いで、カレーの日は父だけ別の料理を食べていた。

竹内真「カレーライフ」は、みんな大好きカレーライスをめぐる物語だ。だが、ただ「カレー大好き」「カレー美味しい」という物語ではない。

ケンスケ、サトル、ワタル、ヒカリ、コジロウの5人はいとこ同士、毎年夏になると親戚たちが祖父の家に集まり、そこで祖父特製のカレーライスを食べるのが楽しみだった。そんな祖父が突然亡くなってしまう。その葬儀の席で、5人のいとこたちは「いつかカレー屋をやろう」と約束する。場所は祖父が営んでいた洋食屋。そこは、5人が毎年祖父のカレーを食べた思い出の場所だった。

子どもの頃に交わした子ども同士の他愛ない約束。そんな話はすぐに忘れられてしまうはずだし、事実、物語の語り部であるケンスケも忘れていた話だった。だが、ケンスケの父が子どもたちの約束を覚えていたことで、ケンイチは他のいとこたちを探し、カレー屋開業に向けて動き出すことになる。

ストーリーは、ケンスケがいとこたちを順番に訪ね歩き、カレー屋を開業するために動くというカレー屋を開くというのが基本となっていて、そこにケンスケたちの祖父の過去の秘密にまつわる謎解きのような話が盛り込まれていく。ケンスケが富士山麓アメリカのバーモント州、インド、沖縄と4人のいとこたちの消息を求め、また祖父のカレーの味や過去の秘密を解明するために旅を重ね、成長していく展開は、ロールプレイングゲームのようでもあり、手に汗握る冒険の旅というわけではないが、読んでいてワクワクする。

5人のいとこたちもそれぞれにキャラ付けがされていて、主人公となるケンスケはやや優柔不断で頼りないが、最初に仲間に加わりサポート役となるワタルは常にポジティブな愛されキャラのムードメーカーだし、年長のヒカリはしっかり者のお姉さん的な存在。ワタルの双子の兄サトルもヒカリ同様しっかり者であり、探究心の旺盛なキャラクターだ。もうひとり、最後に仲間に加わるコジロウは、他のいとこたちとは違う孤独を背負っていて、それも物語の中ではケンスケたちが探し求める祖父の秘密の解明に関わってくる。

ところどころ出来すぎで都合のいいストーリー展開だなと感じるところがあるし、単行本460ページで二段組という大長編で長いとも感じる。読んでいて中弛みを感じたところもあった。著者にとっては、小説すばる新人賞受賞後初めてとなる書き下ろし長編ということで、書きたいエピソードが次々と湧き上がったのだろうか。全部詰め込んでやれという感じで書かれたのかもしれない。

途中でそういう感じを受けたものの、終盤からラストのいとこたちが集まり、祖父の過去に隠されたある秘密が明らかになっていく展開は一気読みしてしまう面白さがあったし、なによりケンスケたちが自分たちのカレー屋で提供する祖父のカレーの味を探求し再現しているプロセスは面白かった。とにかく読んでいてカレーが食べたくなる。お腹が空いているときに読むと大変なことになるから気をつけたほうがいい。

この本は、自宅の本棚の奥に長年眠っていた単行本で、刊行は2001年だから20年前の作品になる。新しい本が出るとついつい買い込んでしまい、読むスピードが全然追いつかないまま本棚の奥や部屋の隅で積ん読になってしまう本たち。何年も積ん読放置したままの本は処分してしまうべきかとも思うが、10年20年経って、ふと目に留まり読んでみると面白い作品だったりする。本を買うのも積んでおくのもやめられない理由はそういうことなのだと、またひとつ言い訳を重ねてみたりする。