タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「同伴避難 家族だから、ずっと一緒に・・・」児玉小枝/日本出版社-大きな災害にとき、あなたの地域では、大切な家族(ペット)と一緒に避難できますか?

 

 

2021年1月31日(日)から2月14日(日)まで、私が『タカラ~ムの本棚』として棚を借りている千葉県松戸市八柱の『せんぱくBookbase』にある和室スペースをお借りして、「『老犬たちの涙』写真展」を開催している。このレビューをアップした2月7日(日)は、ちょうど中日にあたる。

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「老犬たちの涙」は、年老いて認知症になったり病気になって弱ってしまった老犬たちが、飼い主のさまざまな事情(同情できる事情も一部あるが、ほとんどは身勝手な事情だ)で保護施設に預けられ、殺処分を待つだけになった悲しく切ない様子を写した写真集だ。私は、一昨年当時の愛犬ラムが最期の時を迎えようとしている頃に「老犬たちの涙」と出会い、彼女を看取った後に本を読んでレビューを書いた。

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今回の写真展は、そのレビューをきっかけに著者の児玉小枝さんとネット上でつながり、そのご縁から開催することになったものだ。

前置きが長くなったが、今回レビューする「同伴避難」は、東日本大震災のときにペットと同伴での避難を受け入れた新潟県の避難所を取材した写真集である。この本を読んだのは2011年の年末で、今回写真展の開催を踏まえて昔のレビューを掘り起こし、現在の視点で少し内容を書き替えた。

私の母方の実家は、福島県双葉郡に暮らしていて、東日本大震災で起きた福島原発事故の避難区域にあたっていたため、震災直後は私の家に親戚一同(3家族で10人くらい)が避難していた。当時、すでに我が家にはラムがいたが、福島の親戚も犬を飼っていて(いま思い返すとだいぶ老犬だった)避難生活中は当然その犬も一緒に暮らしていた。

私の親戚のように、大きな災害に直面して避難生活をおくらなければならなくなったときに、ペットも一緒に避難する『同伴避難』ができる人は限られている。当時、福島原発事故避難区域では、ペットや家畜を置き去りにして避難しなければならない状況が数え切れないほど発生し、残されたペットや家畜の野生化が社会問題となった。

本書の中で飼い主たちも証言しているし、後書きで著者の児玉小枝さんも書いているが、飼い主のほとんどは、ペットを連れて避難することを考えていた。それを拒んだのは国や自治体による指示と正確な情報が伝えられなかったことによる誤解だ。避難所へ向かうバスにはペットを乗せることが許されず、ペット運搬用の車を別に用意するような温情は、国も自治体も持ち合わせなかった。人間しか乗れないバスに乗る以外に移動手段を持たない飼い主には、ペットを置き去りにする以外の選択肢がなかった。

自分の車で避難が可能な飼い主は、ペットを車に乗せて避難所に移動できた。しかし、避難所ではペットを連れての滞在を拒否される。なぜなら、避難所は人間が生活することしか想定されていないからだ。

ほとんどの避難所がペット同伴の避難を拒否する中、新潟県の避難所ではペットの同伴避難が認められた。それは、新潟県が過去の地震災害での経験からペットを連れての避難受入体制を構築していたからである。東日本大震災のときも、発生から数日以内に新潟県内の各自治体に対してペットを含めた避難者の受け入れを指示し、各避難所では、動物愛護団体などの協力も受けながら受入体制を整えた。ペット専用の避難スペースの確保、獣医による定期的な巡回、動物愛護団体のボランティアによる支援活動などが当然のように行われ、人間だけでなく、動物たちも安心して避難生活が送れる環境が作られた。

私は、本書を読むまで新潟県がそのような取組みをしていたことを知らなかった。置き去りにされた動物たちの悲惨な状況ばかりに目を奪われ、動物の命に対して無策な行政にただ憤っていた。

本書を読んで、新潟県のようにペットを同伴した避難を想定して環境を整えている自治体があることを知った。これは、ペットと暮らしている我が家にとっても大事な情報だと思った。

幸いなことに、東日本大震災以降、我が家では避難を必要する大規模な災害を経験することなく、今まで暮らしてきている。2019年に起きた台風災害のときも、私の住む地域では被害は少なく、避難勧告や指示が出ることもなかった。しかし、首都直下型地震東南海地震など、かつての東日本大震災のような大規模災害がいつ起きてもおかしくないのが現状だ。もし、大規模な災害が起きたとき、ペットを連れて避難することが可能なのか、自治体の災害対応状況はしっかりと把握しておく必要がある。

「老犬たちの涙」写真展開催中!
期間 2021年1月31日(日)~2月14日(日) ※水曜休み
会場 せんぱくBookbase
営業時間 11時~15時30分 ※緊急事態宣言中のため短縮営業