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友田とん「『百年の孤独』を代わりに読む」-マジックリアリズム小説の代表的作品『百年の孤独』。傑作とわかっていてなかなか読み通せないこの作品を代わりに読んだ足掛け4年の記録

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ガブリエル・ガルシア=マルケス百年の孤独は、南米マジックリアリズム小説を代表する作品であり、『本好きが選ぶオールタイム・ベスト』だとか『20世紀の世界文学』のようなベストテン、ベスト100的な企画になると、必ず上位(ほぼベスト3)にランキングされる。

(余談だが、この手の『海外文学オールタイム・ベスト』のようなランキングには、重厚長大で「ベストテンに選ばれるなら読んでみようか」と思った読者の高いハードルになるような作品が上位にラインナップにされる。『百年の孤独』、『ユリシーズ』などなど、確かに読めば面白いが読み通すのは大変な作品。でも、こういうラインナップが海外文学苦手の人を増やすんじゃないかなと思ったりする)

友田とん「『百年の孤独』を代わりに読む」は、文字通り「『百年の孤独』をみなさんの代わりに読んでみます」という内容の本。友田さんが誰に頼まれたわけでもなく個人の勝手ではじめて、2014年からネットで連載してきたものだ。

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「第0回 明日から「『百年の孤独』を代わりに読む」をはじめます」がネット公開されたのが2014年8月。そこから実に足掛け4年もの間、友田さんは「百年の孤独」を代わりに読み続け、そのレポートをネットに公開してきた。ネット連載は、「第17回 如何にして岡八郎は空手を通信教育で学んだのか?」である。なお、本書には「第18章 スーパー記憶術」と「第19章 思い出すことでしか成し得ないものごとにについて」、「第20章 代わりに読む人」の3章があるが、これらは書き下ろしである。ちなみにネット連載時は「第0回」、「第8回」のように「回」となっているが、本書では「章」に統一されている。

代わりに読むにあたって、友田さんは2つのことを「なんとなく」決めた。

・冗談として読むこと
・なるべく関係ないことについて書く(とにかく脱線する)

である(「第0回 明日から「『百年の孤独』を代わりに読む」をはじめます」より引用)

その決めごとのとおり、第1回から話は「百年の孤独」とは全然関係のない昔のテレビドラマ(「それでも家を買いました」)の話に脱線する。友田さんは、1991年にTBSで放送されたそのドラマの中で発せられる「海老名は、ゼッタイにいやー!!」というセリフの強烈なインパクトを思い出すのだが、そこから、「百年の孤独」の中でホセ・アルカディオ・ブエンディアの無計画な考えに翻弄される妻ウルスラを想起し、物語とドラマを絶妙に融合させて話を進め、まとめていくのだ。

確かに、いきなりドラマの話に『脱線』し『冗談』のように論考を進めているのだが、いやいや実にそこがうまい。読んでいて、「オイオイ、いきなりそっちの話かよ!」とツッコミつつ、読み進めると「なるほど、そうくっつけるのか!」と感心してしまう。その繰り返しで、グイグイと先へ先へと読み進めたくなってくる。

脱線先はドラマばかりではない。ドリフのコント、タモリの記憶術、植木等の無責任男。「百年の孤独」を読みながら、その場面から別の関係ないドラマやコント、映画に脱線できるのは、それだけ友田さんの知識のひきだしが豊富だということなのだろう。ただ、その豊富な知識が他になんの役に立つのかは・・・考えないほうが良さそうだ(笑)

百年の孤独」は、20世紀の世界文学を代表する作品だ。でも、よほどの本好きでなければ読むことはないし、読む始めても最後まで読みきれない人も多いだろう。本書「『百年の孤独』を代わりに読む」は、「百年の孤独」を読んだことがある人も、途中で挫折した人も、全然読んだことない人も、誰でも楽しめる。そして、本家の「百年の孤独」を読んでみたくなる。

そういう私だが、百年の孤独」はもう読んでいる(今ちょっとドヤ顔してます)。それも、もう20年以上前のことなので、内容についてはほとんど忘れていた。今回、本書を読んでみて「百年の孤独」の内容をはっきりと思い出せた場面もあるし、「そんな話だったっけ?」と思ったところもあった。

私も二十数年ぶりに「百年の孤独」を読み返そうか、と部屋に山と積まれた未読本を横目に考えたりしている。

【補足】
本書は、友田さんの自費出版本であり、一般書店やネット書店では取扱いがありません。私は、東京・駒込にある『BOOKS青いカバ』で入手しました。他に、蔵前の『H.A.Bookstore』や赤坂の『双子のライオン堂』、田原町の『Readin'Writin'』、下北沢の『本屋B&B』などで取扱いがあるようです。

■取扱い店(友田さんのTwitter情報)

 

 

ネットだと、『BOOTH』というサイトで買えるみたいです。

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百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)