マーガレット・アトウッドというと、やはり「侍女の物語」を思い起こす。(絶賛積ん読中)
本書は、マーガレット・アトウッドの短篇集なのだが、他の作家の短篇集とは雰囲気が異なる印象を受ける。全3部で構成される短篇集に収録されている作品は全35篇。その一篇一篇が、著者の思いを読者に投げかけるような語り口で記されている。
著者自身が考える人生の物語。自分自身を語り、飾り、探し求める物語。著者を取り巻く環境や生きていく支えの物語。
「私はこう思っているのよ」
「私はこんなことに悩んでいるのよ」
「私にはこんな場所で生きているのよ」
物語は、あるときは小説であり、あるときは詩篇であり、あるときは戯曲である。物語は、あるときはリアルであり、あるときはイマジネーションである。様々に姿を変えて語られる物語は、ときに読者の共感を呼び、ときに読者の困惑を招く。
訳者あとがきに記されるように、35の物語はアトウッドの創作に対する実験だ。様々な文体、様々な表現をつかって創作された作品は、それぞれに違う顔を見せる。それだけに、読者も様々な読み方が楽しめる。純粋にエンターテイナーとしての小説世界を楽しむのもよい。ひとつひとつの作品から、著者の思想を読み解くのもよい。創作技法、表現技法の勉強につかうのもよい。
どっぷりとはまり込めるタイプの本ではないけれど、手元にあって少しずつページを開いてみたくなるタイプの本だと感じた。
- 作者: マーガレットアトウッド,Margaret Atwood,斎藤英治
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/10/24
- メディア: 文庫
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