昨年(2017年)、やまねこ翻訳クラブの20周年を記念して書評サイト『本が好き!』で開催されたオンライン読書会。そこでは、大きな“祭り”が2つ起こった。ひとつは、「なぜカツラは大きくなったのか?-髪型の歴史えほん」によって巻き起こされた“カツラ祭り”、そしてもうひとつが本書「中世の城日誌~少年トビアス、小姓になる」によって巻き起こされた“城まつり”である。
“城まつり”を巻き起こした「中世の城日誌」をようやく読んでみた。
本書は、少年トビアス・バージェスが伯父であるストランドボロー男爵ジョン・バージェスのもとで小姓として仕えた1年間の記録である。それを、トビアスの日記という形で記している。伯父の居城であるストランドボロー城に到着してから、小姓としての仕事をこなしつつ、立派な騎士の従者となるための教育を受けるトビアス。まだ13歳の子どもであるトビアスにとっては、勉強は退屈だし理不尽な体罰には辟易してしまう。それでも、城で起きる様々な出来事はトビアス少年には新鮮で興奮することばかりだ。
少年の目と彼の言葉を通じて見えてくる中世の城事情は、学校の世界史では知ることのできないことばかりで、読んでいて驚きと感心の連続だった。
例えば城での仕事。トビアスは、小姓として伯父と伯母のそばに仕えて使い走りや食事のときの給仕をこなす中で礼儀作法などを身につけていく。城には、小姓以外にも様々な立場の従者が働いていて、それぞれに役割を果たしている。仕事上の上下関係が確立されていて、それぞれが下働きを差配しながら仕事をこなしている。なんとなく、現代の企業間の下請構造にも通じる気がする。
作法や礼儀を重んじる中世貴族の生活は、とても儀礼的でしっかりとしたルールによって動いている。例えば馬上槍試合についても、試合の華々しさが注目されるが、そこに至るまでの一連のルーティンは、確立された儀式として厳かに執り行われる。トビアスも感じたように退屈な儀式だ。
他にも、狩りの様子や秋の収穫の様子、賓客をもてなすときの贅沢な宴会の様子など、なるほど当時はそういうことが行われていたのかと興味深かった。
トビアス少年は、小姓として1年間をストランドボロー城で暮らし、大きく成長して故郷へ帰る。その後どのように成長したのか。立派な騎士になれたのか。少年のその後が少し気になる。