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オリヴィア・スネージュ:文/ナディア・ベンシャラル:写真「パリの看板猫」(青幻舎)-カフェ、書店、ホテル。パリの店先には猫がよく似合う

パリの看板猫

パリの看板猫

  • 作者: オリヴィア・スネージュ,ナディア・ベンシャラル
  • 出版社/メーカー: 青幻舎
  • 発売日: 2016/03/03
  • メディア: 単行本
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ふと立ち寄った店で、品物が整然と並ぶ陳列棚の片隅に丸くなっている猫がいると心がほっこりする。不思議なもので、家で飼っているペットは犬なのに、店の看板動物というと猫の方がいい。

「パリの看板猫」は、パリにあるカフェや書店、ホテルなどでお客様の癒やしの存在となっている看板猫を集めた写真集である。〈パリ〉というだけでもオシャレだというのに、紹介されている猫たちのなんとオシャレなことよ。いや、よくよく見れば日本の喫茶店や古本屋の店先で、何事にも「我関せず」と寝転んでいる猫と根本的には同じ動物なのだけど、〈パリの猫〉というだけで、数段格上のような気がしてくる。

本書には、18の店で看板猫としてお客様をお迎えしている猫たちが紹介されている。

 

創業は19世紀という老舗の食堂オ・ペール・トランキーユの看板猫はヴァニーユ。2005年にふらりと店に現れた猫は、気まぐれに店を抜け出しては閉店間際にちゃんと戻ってきて、店員から餌をもらうちゃっかり者でもある。鳥を捕まえては店の2階に持ち込むのも困りものだがご愛嬌だ。

本好きなら、シェイクスピア・アンド・カンパニー書店の看板猫キティが気になるかもしれない。1951年創業の書店には、これまで7匹の猫が棲み着いてきた。その中の何匹かにつけられた名前がキティ。現役の看板猫もキティ。この店を訪れてきた作家たちの写真に囲まれて、白毛にブルーの瞳のキティが凛として立つ姿は、何やら高貴な雰囲気さえ感じさせる。

猫が、店の看板動物として魅力的なのはどうしてだろう。思うに、猫のクールさがお客様との適度な距離感、温度差を生んでいることが、魅力的に感じる要因なのではないか。

“看板犬”が売りの店もある。木製のドアをそっと開けると、嬉しくて尻尾をちぎれんばかりに振りながら愛嬌を振りまく犬が迎えてくれる。齢をとって動くのが億劫になってる犬も、ちょっと気怠けに頭をあげて、おざなりにパタパタと数回尻尾を振ってくれるだけで愛おしい。犬には犬の魅力がある。

でも、そんな犬の人懐こさが「ちょっと煩わしいな」と思うときもあったりする。その点、猫はいつもクールで、人に媚びることもあまりない。店にお客様が入ってきても特に関心もなく、気が向いたら顔をあげてみせる程度だ。こっちからアプローチしなければスキンシップも取れないし、ちょっとでも機嫌を損なえば容赦なく爪をたてる。実に付き合いにくい。それなのに、時折やけに人懐こく擦り寄ってきたりする。そのギャップに客はコロリといかされる。

人間というのは、どうにも付き合いにくい相手に魅力を感じる生き物のようだ。