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【書評】池上彰「世界を救う7人の日本人 国際貢献の教科書」(日経BP社)-世界で活躍し、その国の人たちと未来のために貢献する日本人は私たちの誇りです

「いい質問ですね」のフレーズが2010年の流行語にも選ばれたジャーナリストの池上彰氏。その池上氏が世界で活躍する国際協力に従事する日本人に取材したのが本書である。テレビとはまた違うジャーナリスト池上彰の一面を垣間見せる1冊である。

世界を救う7人の日本人 国際貢献の教科書 (朝日文庫)
 

かつて日本は、国際貢献の世界であまり評判の良い国ではなかったように思う。しかし、今日国際貢献活動における日本の位置づけは、変化してきているということが、本書を読むとわかってくる。

 

まず、今の世界では“国際貢献”ではなく“国際協力”という言い方が定着してきているという。それは、先進国が発展途上国に対して一方的に施しをするのではなく、その国と協力関係を築きながら、相互に発展していく“Win-Win”の関係を目指すのが今日の国際協力だからだ。食料が不足している地域に対して食料を援助するのではなく、食料を生産する仕組みを提供するのが今日求められている国際協力の姿である。

本書では、主にアフリカ諸国やアフガニスタンで食料問題、教育問題、健康問題、経済問題についても解決策を提供している日本人スタッフを紹介している。

長らく内戦が続いていたスーダンで母子健康問題に従事する日本人女性スタッフたちやアフガニスタンで保健問題に従事する日本人女性医師がいる。アフリカ・ウガンダの乾燥した地域でも生産できる稲作を指導している日本人スタッフもいれば、同じアフリカのモザンビークで、アルミ精錬工場を立ち上げて、将来の経済発展を見越した資本提携や国際的な競争力の確保などの経済活動の熟成に協力を惜しまない日本人もいる。

共通しているのは、結果のみを提供するのではなく、プロセスを提供しているところにある。農業指導は、適切な品質の管理や水源の確保などの農業を取り巻く環境づくりや農業従事経験者の確保などの人的なリソースの確保に尽力しているし、母子健康問題についても助産師などの医療従事者の育成に力を注いでいる。また、様々な問題の根底に教育の遅れがあることから、教育の充実に注力する必要性も訴えて取り組んでいる。そのために、国や教育機関から一方的に押し付けるのではなく、子供を持つ親が積極的に問題解決を図れるような地域連携の仕組みを構築した事例も紹介されている。

いまや、国際協力の世界における日本への期待感は、本書に登場するような先達たちの活躍もあって非常に注目されている。世界経済において発展途上国の存在はBOP(Base of Economic pyramid)という言葉とともに注目をされてきているが、彼らの購買力を高めるには、ただ単純な経済援助をするだけではなく、彼ら自身が経済活動を自主的に行える国家を形成する必要がある。かつて敗戦のどん底から高度経済成長を遂げた日本の復興の歴史は、今後発展を目指す途上国から非常に注目されているという。もっと日本も国際協力の世界で存在感をアピールする必要があるだろう。