「論語」とは、中国・春秋時代(紀元前770年頃から紀元前403年頃)の思想家である孔子(紀元前552年-紀元前479年)が弟子たちと交わした言行を、孔子の死後に弟子たちの手によってまとめられた書物であり、儒教における「四書」のひとつである。
「論語」には、孔子の教えが数多く記録されていて、有名なところだと、
子曰く「学びて時に之を習う、亦悦ばしからずや。朋有り遠方より来る、亦楽しからずや。人知らずして慍おらず、亦君子ならざるや。 (学而第一 一)
子曰く「吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順う。七十にして心の欲する所に従えども矩を踰えず。 (為政第二 四)
などは、中学生くらいの時に国語の漢文の授業でお目にかかったことがあるという人もいるかもしれない。
さて、本書「蛭子の論語」は、マンガ家でタレントの蛭子能収が、孔子の「論語」を読んでみるという企画によって誕生した。
2014年に出版した「ひとりぼっちを笑うな」が、意外にも評判となり、蛭子さんの生き方、人生観が広く支持を受ける結果となった。「蛭子の論語」は、蛭子さんの生き方や人生観が「論語」に書かれている孔子の教えに、どこか通じるところがあるのでは、と思い至った編集者による企画をまとめたものである。
「論語」に記されている孔子の言葉の中から50個を選択し、そのひとつひとつに対して蛭子さんなりの解釈や蛭子さん自身の人生観を語る形で、本書は構成されている。
例えば、先述した「学而第一の一」については、孔子の説く3つのトピック「学び」、「人間関係」、「君子とは」を蛭子さんなりに考えていく。その見方が、やはり独特なのだ。
「学び」については、自分が学校の勉強はしてこなかった、と語り、自分にとっての学びの悦びはギャンブルをやっている瞬間だ、と続きます。蛭子さんにとっては、ギャンブルで頭をつかうことが学びであり、その瞬間にこそ心の浮き立つような楽しさを感じるのだ。
「人間関係」については、「ひとりぼっちを笑うな」でも書かれていた他人との距離感がここでも貫かれている。孔子は「友が遠方から訪ねてきてくれるのは楽しい」というが、蛭子さんは「誰かが家に来るなんて、ちっとも楽しいことじゃない」とバッサリだ。
こんな感じで、蛭子流の「論語」解釈が書かれている。改めて感じるのは、蛭子さんの軸の固まり具合というか、ブレないところだ。そして、そんな蛭子さんの思想信条や人生観は、確かに孔子の教えにも通じる部分があるように思える。2500年の時を経て、奇妙にシンクロする《孔子》と《蛭子》。意外な面白さがそこから生まれている。
論語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)
- 作者: 加地伸行,谷口広樹
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/10/23
- メディア: 文庫
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