タカラ~ムの本棚

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《グレイマン》と呼ばれる冷酷無比な殺し屋は少女との約束を守るために苦難の道をひた走る-マーク・グリーニー「暗殺者グレイマン」

冒険アクション小説には、あまり積極的には関わってこなかった。あまり暴力的なことは好きではないという理由もあるが、これまでに冒険アクション小説であまり面白い作品に巡りあってこなかったというのもある。どうも、波長があっていないのかもしれない。

暗殺者グレイマン (ハヤカワ文庫 NV)

暗殺者グレイマン (ハヤカワ文庫 NV)

 
暗殺者グレイマン

暗殺者グレイマン

 

そんな平和主義な私が今回、マーク・グリーニー「暗殺者グレイマン」を手に取ったのは、書評サイト「本が好き!」で立ち上がった「勝手にコラボ企画:ハヤカワ文庫の100冊 2015秋」という読書企画と、「ハヤカワ・ミステリマガジン2015年11月号」の特集「北上次郎責任編集 これが冒険・スパイ小説だ!」の影響にほかならない。

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今回、食わず嫌いというのはやはり良くないことだと、改めて考えさせられる結果になった。そのくらい本書「暗殺者グレイマン」は抜群に面白い小説だったのだ。

本書の主人公コート・ジェントリーは、“目立たない男(グレイマン)”という異名をもつ凄腕の殺し屋だ。あらゆる武器を使いこなし、格闘術も身につけ近接戦にも強い。冷静沈着で冷酷無比。狙った相手を確実に始末し、“グレイマン”の異名が示すようにその姿を消す。

元CIAの極秘部門SADに属していたグレイマンは、現在殺し屋として仕事をする一方、CIAからは「目撃次第射殺指令」が出されている身であり、常に命を狙われる立場でもある。彼がCIAを解雇され命を狙われる身になった理由は明かされていない。

今回、グレイマンはシリアに赴き、ナイジェリアのエネルギー大臣イサク・アブバケルを殺害した。しかし、話はそこで終わらなかった。彼のハンドラーであるサー・ドナルド・フィッツロイを訪ねてきたロイドという男が、フィッツロイと彼の息子一家を人質に取り、グレイマンを殺害することに協力するように要求したのだ。ロイドは、多国籍企業ローラングループぼ弁護士であり、ローラングループはナイジェリアでの大規模な開発事業契約締結を目前にしていた。グレイマンによって暗殺された大臣は、ナイジェリア大統領の弟であり、大統領が復讐のためにグレイマンの殺害を命じたのだ。

グレイマンは、冷酷無比な殺し屋だが、その反面で優しい人間味のある男でもある。フィッツロイの双子の孫娘が含む一家が人質になっていることを知ると、危険を顧みずに一家が軟禁されているノルマンディに向かうことを決意する。

シリア、イラクチェコハンガリー、スイス、そしてフランスのパリへと、ヨーロッパ大陸を横断するグレイマンを殺害するため、ローラングループは12ヶ国の特殊部隊を召集し、執拗にグレイマンの命を狙う。グレイマンは、様々な敵と対峙し、満身創痍の状態になりながらもフィッツロイの孫娘クレアとの約束を守るために、一路ノルマンディを目指す。

戦闘シーンの圧倒的な迫力と次々と襲いくる刺客との死闘を繰り広げながらヨーロッパを移動するスピード感。いかなる苦難も鍛えぬかれた肉体と鋭敏な感覚、そして何より強烈な意志の力によって打ち破り、切り抜けていくグレイマンの姿は、ページをめくる手を途中で止めさせてくれない。

これほどに読者を惹きつけるのは、グレイマンというキャラクターさることながら、ストーリー展開の疾走感もある。そして、銃火器の取り扱いや近接戦での壮絶な戦闘シーンのリアルティがそれをさらに強固なものにしていると思う。

「ハヤカワ・ミステリマガジン2015年11月号」には、マーク・グリーニーのインタビュー記事も掲載されている。そこに書かれている著者略歴には、次の記述がある。

執筆のため、軍人や法執行機関関係者とともに銃火器使用・戦場医療・近接戦闘術の高度な訓練を受けている。

なるほど、グレイマンシリーズの戦闘シーンのリアリティはここにあるのだな。著者自身の経験値が小説の中に確実に活きている。

グレイマンシリーズは、本書「暗殺者グレイマン」を第1作として現在第4作まで翻訳出版されている。本国アメリカでは、第5作の出版も決まっているようだ。本書ですっかりグレイマンにハマってしまった私としては、本シリーズは通して読みたい作品になっている。まずは、シリーズ第2作「暗殺者の正義」を手に入れるところからはじめてみよう。

暗殺者の正義 (ハヤカワ文庫 NV)

暗殺者の正義 (ハヤカワ文庫 NV)

 
暗殺者の正義

暗殺者の正義

 
暗殺者の鎮魂 (ハヤカワ文庫NV)

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暗殺者の鎮魂

暗殺者の鎮魂

 
暗殺者の復讐 (ハヤカワ文庫NV)

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暗殺者の復讐

暗殺者の復讐