舞台は、地下深くに広がるダンジョン。そこには、数々の魔物が棲み、冒険者たちの行く手を阻む。スライム、バジリスク、そして強大なドラゴン。冒険者達は、ダンジョンの奥深くに潜む魔術師を倒し、魔術師によって囚われた黄金の国の王を救い出すために、仲間を集い、装備を揃えて危険なダンジョンへと踏み入っていく。
と、基本的なストーリーはダンジョンRPGである。主人公たちのパーティー(剣士、魔術師、鍵師、ドワーフ)は、先の冒険でドラゴンに食われた剣士の妹を救うためにダンジョンに向かうのだが、ここである問題が持ち上がる。食糧問題だ。彼らは一文無しで装備や食糧を買い揃える余裕はない。そこで、リーダーである剣士は、食糧をダンジョン内で調達することを提案する。つまり、魔物を食糧としようというのだ。こうして、前代未聞、ダンジョンで魔物を倒して食べてみよう!の冒険(ちと違う)が始まる。
このコンセプトは目からウロコだった。今までにはない新しい視点でのグルメマンガであり、かつこれほどまでに食指をそそられないグルメマンガが過去にあっただろうか。確かに、ゲテモノグルメを扱ったマンガはあっただろう。でも、本書の食材は「魔物」なのである。ゲテモノを通り越して空想の生き物。しかも、どう考えてもどう見ても人間が食べるものじゃない。
そんなゲテモノであるはずの魔物料理。これがどういう訳かちょっと美味しそうに思えてしまう瞬間が少なからずあるのだから不思議だ。第1話の大サソリと歩き茸、スライムの干物が入った水炊き鍋や、第3話に出てくるバジリスクのローストなどは、食材のことを考えなければ意外と食べられそうな気がしなくもない。もっとも、それはごく一部で、ほとんどは実際に食べようとは絶対に思わないけどね。
まったく現実味を要求されないだけに、今後いくらでも料理の幅は広げられそうだ。これからどんな魔物(食材)をどんな料理に仕立てあげるのか興味津々なのである。