タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

旅は道連れ、ワンコも一緒!-片野ゆか「旅はワン連れ ビビり犬・マドとタイを歩く」

犬を飼っていると、どんなところでも犬を連れて出かけたくなるし、実際に連れ歩いてしまう。私も、今の犬を飼ってからは車に乗せて北は青森から南は四国まで出かけている。でも、さすがに海外に犬を連れて行くという発想はなかった。

旅はワン連れ (一般書)

旅はワン連れ (一般書)

 

著者の愛犬・マドは、保健所で殺処分寸前のところを保護団体に救われ、その後著者のもとに引き取られた。捨て犬だったときに相当なトラウマを背負ったのか、ほんの些細な物音にも過敏に反応してしまうような超ビビリ犬。それでも、著者や夫である高野秀行さんが愛情を一心に注ぎ、少しずつビビりを克服してきた。国内であれば旅行にも連れていけるようになってきたこともあり、著者夫婦はある決断をする。それは、マドを連れてタイへ行くということだった。

色々と発見のある1冊だと思う。犬を飼っている人間としては、犬を連れて旅をする際の難関は、公共交通機関の利用だ。国内旅行については、離島への旅でもなければ車を使ってほぼ全国各地に出かけることができる。しかし、海外となれば飛行機に乗らなければならない。この本を読むまで、犬を飛行機の客室に乗せられることを私は知らなかった。すべての航空会社が犬を乗せられるわけではないが、数社はキャリーバックに入れることを条件に機内へ犬を乗せることを許可している。

さらに勉強になるのは、犬を連れて海外旅行をする際の各種手続きに関する事項だ。狂犬病予防接種は1年以上の間隔をあけてしまうと連続した摂取とみなされないというのは、「へぇ~」と唸ってしまった。それと、動物検疫所の職員や在日タイ大使館の職員が親身になって対応してくれたり、成田で出国手続き対応をしてくれた航空会社のカウンター職員が優しくしてくれたりと、犬を連れた人に皆が優しく親切にしてくれることも、なんだかホッとするエピソードである。

タイ滞在中の話も興味深い。タイはもともと街に犬があふれている国で、それが実に自然であり、著者がマドを連れた旅の地にタイを選んだのも、犬にとって優しい場所だからなのだが、そういう緩い雰囲気も次第に変化しているようだ。犬を連れて気軽に散歩できるような場所も少なくなっているらしい。それでも、なんやかんやと夫婦もマドもタイでの日々を楽しんでいる。タイでの観光や食事、ホテルでのリゾートでののんびりとした雰囲気などは、犬を連れているいないに関わらず憧れてしまう風景だ。

約2ヶ月に及ぶタイの旅で、夫婦とマドの距離はまた一段と接近できた。犬を飼うときに一番大切なのは犬との信頼関係の確立と愛情いっぱいのスキンシップやコミュニケーションだと思う。このように、長い旅を通じて身につけた信頼感や愛情を、犬は長く忘れることなく抱き続ける。いろいろと面倒なこともあるけれど、たまにはこうして犬を連れて旅をするのもいいことなのかもしれない。