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読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

栗林佐知編/大原鮎美、志賀泉、ほか著「吟醸掌篇vol.2」(けいこう舎)-知る人ぞ知る作家たちの作品を集めた短篇アンソロジーの第2集。今回も良質な作品が集まっています。

 

吟醸掌篇 vol.2

吟醸掌篇 vol.2

  • 作者: 栗林佐知大原鮎美志賀泉なかちきか坂野五百久栖博季,空知たゆたさ愚銀ともよんだ踏江川盾雄高坂元顕,栗林佐知,山?まどか木村千穂たらこパンダ坂本ラドンセンター,こざさりみ耳湯 PLUMP PLUM
  • 出版社/メーカー: けいこう舎
  • 発売日: 2017/08/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『ほかでは読めない作家たち、集まりました』の惹句で、ほとんど知られていない作家たちの存在を教えてくれた「吟醸掌篇vol.1」から1年ぶりに刊行された短篇アンソロジーの第2弾になります。

知る人ぞ知る作家たち集まりました!

という惹句とともに表紙を飾るのは坂口安吾をモチーフにした猫。イラストを手がけるのはvol.1と同じく山崎まどかさんです。

吟醸掌篇vol.2」のラインナップは以下の通りです。

■詩と小説
「蜆」大原鮎美/画・たらこパンダ ※詩
「花火なんか見もしなかった」志賀泉/画・坂本ラドンセンター
「ゴンドラドラ」なかちきか/画・木村千穂
「冬芽」坂野五百/画・こざさりみ
「うしをきりとる」久栖博季/画・たらこパンダ
「秋の超音波」栗林佐知/画・耳湯

■紀行の愉しみ
越後駒ヶ岳 滝ハナ沢 高坂元顕/画・PLUMP PLUM

■読書人コラム
わたしの愛する短篇作家② アイザック・シンガー
 記念碑としての文学 空知たゆたさ/画・坂本ラドンセンター
どこどこ文学の短篇わたしのベスト3
 〈朝鮮文学篇〉愚銀
 〈韓国文学篇〉ともよんだ
去年の読書から
 わたしの短篇ベスト3 踏
 わたしのベスト短篇集 江川盾雄

 

vol.1から続いての登場は、小説の志賀泉さんと栗林佐知さん、コラムの空知たゆたささん、江川盾雄さんになります。

vol.2では、紀行文が掲載されているのが新たな取り組み。高坂元顕さんがAAC(AZABU ALPINE CLUB:麻布学園山岳部)の部報「岩燕第10号」に寄せたものです。

小説では、前作に続いてフクシマを舞台に原発事故に翻弄される人々を描く志賀泉さんの「花火なんか見もしなかった」が印象深い。事故から6年ぶりに開催される花火大会の夜に起きるできごと。震災前の小学生時代の思い出と、津波で家を失い、原発事故で故郷を離れたぼくの孤独。そんな彼の孤独に土足で踏み込んでくるように被災地でポケモンGOに興じる若者たち。復興が進み、人々が少しずつ戻り始めているとは言われていても、その胸の内はまだまだ複雑で越えられない何かがあるということを、この作品は語っていると感じます。

坂野五百さんの「冬芽」も印象に残る作品。今回収録された作品の中では一番グッときた作品です。人生の終わり方、老いや介護といった問題との向き合い方、ゆっくりとしっとりと描かれる物語は、読み終わったときに「いい話を読んだ」という充足感がありました。

その他の作品、コラムも読み応えがあり、前作同様にバラエティ豊かな作品が揃っています。

vol.1のレビューでも書きましたが、世の中には私の知らない作家がまだまだこんなにいるんだなと驚かされます。と同時に、新人賞をとったりしてデビューしても作家として生活するのは本当に難しいのだということを実感しました。「吟醸掌篇」の取り組みをこれからも応援したいと思います。

 

s-taka130922.hatenablog.com

 

 

吟醸掌篇 vol.1

吟醸掌篇 vol.1

  • 作者: 志賀泉,山脇千史,柄澤昌幸,小沢真理子,広瀬心二郎,栗林佐知,江川盾雄,空知たゆたさ,たまご猫,山?まどか,木村千穂,有田匡,北沢錨,坂本ラドンセンター,こざさりみ,耳湯
  • 出版社/メーカー: けいこう舎
  • 発売日: 2016/05/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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