タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

リーヴ・ストロームクロヴィスト/相川千尋訳「禁断の果実-女性の身体と性のタブー」(花伝社)-女性の身体について堂々と語れない環境をつくっているのは、私も含めたアホな男たちなんだよね。

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「女性器に興味はありますか?」と問われたならば、「興味はあります」と答えるだろう。だけど、「女性器について何を知っていますか?」と問われたならば、「詳しいことは何も知らないです」としか答えようがない。

なぜ、私たちは女性器について何も知らないのだろう?
なぜ、私たちは女性器や女性の性について話さないのだろう?

リーヴ・ストロームクロヴィスト「禁断の果実」は、サブタイトルに「女性の身体と性のタブー」とあるように、女性の生理や女性器、性的な快感(いわゆるオーガズム)など、おおっぴらに語ることがタブーとされている女性の身体のことを描いたスウェーデン発のギャグコミックである。この本は、私たちの『なぜ』について描かれたもの。なぜ、女性器や女性の生理、オーガズムを語ることが社会的にタブーとなっているのかを描いた本だ。

目次はこんな構成である。

女性器に興味を持ちすぎた男たち
女性器のタブー
女性のオーガズム
イブたちの声-女性の身体と恥の感情
生理のタブー

なぜ、女性器や女性の性について語ることがタブーなのか。冒頭で、本書全体の案内役となるキャラクターが登場して読者に語りかける。

私たちの文化では、いわゆる「女性器」は目に見えないもの、恥ずかしいもの、話してはいけないものにされていて、無視され、隅に追いやられ、気まずいものとみなされている。しかも、正しい名前で呼ばれていない!
これって問題だって、あなたも思うでしょ!
(p.5 2~4コマから抜粋)

そして、こう続ける。

で、これは家父長制が社会の基本原理になっているせいだと思うんじゃない?
(p.5 4コマから抜粋)

そこから、さらに深く話を進めて、問題の根源が『女性器に興味を持ちすぎた男たち』にあると続けていく。

女性がオナニーすることをやめさせようと様々な研究をしたり、信じがたいような外科手術を行ったりした男もいれば、中世の魔女狩りを扇動した男たちもいる。アフリカから連れてきた黒人奴隷の女性を見世物にした男がいれば、スウェーデン女王のインターセックス疑惑を解明すべき400年前に埋葬された女王の墓を掘り起こした男たちもいる。(具体的に誰なのか、その愚行の詳細は本書でご確認ください)

『女性器に興味を持ちすぎた男たち』の話は、客観的に読めば「こいつらバカだなぁ」と笑えるのだけれど、よくよく考えれば、こんなアホなことを真剣に考えていたのかと恐ろしくなる。そして、自分も男である以上、どこかでこのアホな連中と同調している部分があるのではないかと不安になる。

第2章以降は、女性器を語ることのタブーの歴史的背景が描かれ、女性のオーガズムや女性が自らに抱える恥ずかしさの数々が描かれる。

1972年に打ち上げられたパイオニア10号に搭載された有名な金属板がある。そこには、裸の男女の姿が描かれているのだが、本書ではその女性に女性器(外陰部)が描かれていないことをあげて、女性器を語ることをタブーとする社会を映し出す。

また、オーガズムは女性が妊娠するのに欠かせないことだと信じられていた、という話や(当然ながら間違った認識として後年否定される)、生理に対する不完全な情報が女性の不安や恥ずかしさを引き起こしていることなど、女性の身体に関する間違った、あるいは中途半端な情報がいかに女性たちの不安をあおっているかが描かれていて、女性がなんとも生きづらいことになっているのだと知る。

女性に生きづらいと感じさせる社会を作っているのは、主に男たちであり、私もその一員であるということだ。女性の生きづらさ。女性であることで感じる悩み。男の私にはわからないことばかりだ。でも、わからないから知らぬ顔をしていいわけではない。男だとか女だとか、そういうことに関係なく、楽しい社会にするにはどうしたらよいのだろう。

ギャグ・コミックを読んで、なんだか難しいことを考えてしまった(笑)

 

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