タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

ジミー・リャオ/天野健太郎「おなじ月をみて」(ブロンズ新社)-ぼくがみている月をきっとあの人もみている

ハンハンはまっていました。

ジミー・リャオ「おなじ月をみて」は、待ち続ける物語です。まだ小さいハンハンは、いつも窓の外をみて、なにかをまっています。窓の外に続いている道の向こうから、待ち続けるものがいつかやってくるのを待っています。

それは、ライオンでしょうか?

それは、ゾウでしょうか?

それは、ツルでしょうか?

ハンハンが待ち続ける窓の向こうには、傷ついた動物たちがやってきます。ハンハンが待っている相手も、もしかしたら、いやきっと傷ついているのかもしれません。

人は誰も、なにかを待ち続けているのかもしれません。

遠くへ行ってしまった人を待ち続けているのかもしれません。

いつかきっと戻ってくると信じて、待ち続けているのかもしれません。

待って、待って、待って、待って。

いつまでも待っているのです。無事に戻ってきてくれると信じて待っているのです。

ときに、待ち人は永遠に戻らないこともあります。出ていったときとは違う姿で戻ってくることもあります。

ハンハンが待ち続ける相手は、無事に戻ってくるのでしょうか。ハンハンと同じ月を、どこかの遠い場所で見上げているのでしょうか。ハンハンが待ち続けているように、ハンハンに会えることを待っているでしょうか。

平和なときの『待つ』は、とてもワクワクして楽しいことです。

でも、待つことがつらくて、心が痛いときもあります。とにかく無事で戻ってくることを待つことの苦しさはつらくて悲しいです。

ジミー・リャオは、この作品に『平和への祈り』をこめました。アジアに、そして世界に平和がおとずれることを祈って。

そして、私たちは祈るのです。もう戻らない人の安らかなることを。

その人の遺してくれた物語を読み続けていくことが平和への祈りだと信じています。