タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

ミシェル・ウッド絵/トヨミ・アイガス文/金原瑞人訳/ピーター・バラカン監修「リズムがみえる」(サウザンブックス)-強い印象を与える絵とそこから生まれた詩によって描かれるアフリカ系アメリカ人音楽の歴史

「リズムがみえる」は、500年以上にわたるアフリカ系アメリカ人の音楽の歴史を描き出す。ミシェル・ウッドが描く力強くて印象深い画風の絵と、その絵にインスピレーションを得て綴られたトヨミ・アイガスの詩が織りなす世界は、本書のタイトルのとおり『リズムがみえる』ようだ。

アフリカの大地で鳴り響くリズムは、黒人たちが奴隷として新大陸へ連れられてきたことでアメリカの音楽になっていく。綿花のプランテーションで歌われた音楽は、やがてブルーズとなり、ジャズとなり、スウィングとなり、ゴスペルとなり、リズム&ブルーズとなり、ファンクとなり、ヒップホップとなる。その流れの中で、様々な音楽が派生し、多くのアーティストが生まれ、アフリカ系アメリカ人の音楽は世界中に広まっていく。

私は、音楽に精通しているわけではないし、音楽の歴史にも詳しくはない。それでも、本書が描き出す様々なリズムは、きっとどこかで聞いたことがあるリズムのはずだ。今、私のまわりに溢れている音楽のほとんどがアフリカ系アメリカ人音楽にルーツを有しているのだと感じてしまう。

巻末のあとがきで、訳者の金原瑞人さんが記している。

もし黒人音楽がなかったら、いまの世界の音楽はなんと貧相なものになっていただろう。

本書に描かれるリズムの歴史が完全な空白だったとしたら、今の音楽はどんなリズムで彩られていたのだろう。金原さんが記すように貧相なリズムが蔓延った世界になっただろうか。それとも、別の形で新しいリズムが生まれていただろうか。

事実としての歴史に「もし」はない。今、こうして様々なリズムが世界を満たし、私たちの心を満たし、幸福にしてくれている。それでいい。それでいい。

魂(ソウル)のゆくえ

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