タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

サッサ・ブーレグレーン/枇谷玲子訳「北欧に学ぶ小さなフェミニストの本」(岩崎書店)-「なぜ世界のリーダーはおじさんばかりなの?」。一枚の写真を見て感じたエッバの疑問をきっかけに、彼女と一緒にフェミニストについて学んでみる。

フェミニズム
女の子と男の子の間に不平等があることに気づき、それに対し何かしようとすること

本書「北欧に学ぶ小さなフェミニストの本」の120ページにある『フェミニズムの基本用語集』の一番最初に記されているのが【フェミニズム】という言葉の定義である。

サッサ・ブーレグレーン「北欧に学ぶ小さなフェミニストの本」は、男女平等社会の実現についての先進国であるスウェーデンで出版された子ども向けの本である。主人公となるのは10歳の少女エッバ。彼女は、あるとき新聞に掲載されていた一枚の写真に気づく。それはG8サミットに参加した先進8ヶ国のリーダーたちの集合写真で、そこには8人の各国リーダーたちが並んで写っており、その全員が男性だった。

どうして女の人がひとりもいないの?

 

エッバは疑問を感じた。この世界には、男がいて女がいる。若者もいれば老人もいる。白人もいるし有色人種もいる。なのに、世界のリーダーとされる8人には、ひとりのアジア人を除けば白人しかいない。しかも全員おじさんだ。

女の人はリーダーになれないの?

そこから、エッバの男女平等に対する調査がはじまる。友人たちと『フェミ・クラブ』を作り、男女平等について話し合う。

女性の権利について、昔から女性たちは声をあげ闘ってきたことを知る。メアリー・ウルストンクラフトが「女性の権利の擁護」を書いた200年前から、ずっと女性たちは声をあげつづけてきた。そして少しずつ権利を勝ち取ってきた。選挙権の獲得。様々な活動への女性の参加の実現。それでも、まだ世界には男女の不平等が存在している。女性が活躍することに対する差別や偏見がある。

世界の男女格差を数値化した『ジェンダーギャップ指数』というデータがある。そのデータによると、本書の舞台であるスウェーデンジェンダーギャップ指数が0.816で世界第5位と上位にランクされている。では、日本はどうだろうか。日本のジェンダーギャップ指数は0.657で、ランキングは世界第114位。かなり下位だ。このデータだけで見ると日本は男女不平等社会と言ってもよいくらいである。

現実に私たちの周囲をみれば、日本は女性の権利があまり尊重されていないことに気づく。自分が働いている会社で、女性の経営者はいるか、管理職の女性比率はどのくらいあるかを確認してみる。十分に女性の地位が確立されている会社もあるだろうが、多くの会社で経営者、管理職の多くあるいは全部を男性が占めているところが多い。

国会議員はどうか。スウェーデン議会における女性議員の割合は43.6%であり世界第5位日本の衆参両院をあわせた全国会議員における女性議員の割合は13.7%で世界第140位である。スウェーデンでは議員の2人に1人が女性なのに対して、日本では議員の10人に1人が女性である。

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最近、女性活躍や多様性という言葉をよく耳にする。現実にはまだまだ男女平等にはほど遠い状況の中で、どのように平等な社会を実現していけばよいのだろうか。

本書の中でエッバがおばあちゃんに「わたしは何をしたらいいの?」と尋ねる場面がある。おばあちゃんはこう答える。

それは自分で考えたらいい。わたしは、わたしにできることをした。今はあんたがバトンを受け取ったんだ。今は時代がちがうんだ。昔とは別のやり方でやらなくちゃ。それに新しいアイディアも、今若いあんたたちが考え出せるはずだよ!

この本を読んで、自分のフェミニズム意識が薄かったことに気づかされた。あらためて、自分の周りを見回してみて、自分が男性という立場に甘んじてきたことに気づいた。そして、自分の周りには才能にあふれ実力のある女性がたくさんいることに気づいた。

こうした気づきを得られたことが、この本を読んで私が得た最大の収穫だったのだと思う。