ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

谷口ジロー「犬を飼う そして…猫を飼う」(小学館)-老犬と過ごした最後の日々。彼を見送った夫婦は、やがて猫を飼い始める

まさか17年も長生きしてくれるとは思っていなかった。

我が家の愛犬の話だ。2001年に親戚の家で生まれた子犬を譲り受けて飼い始めた犬だ。この家で暮らして3匹目の犬だ。

谷口ジロー「犬を飼う そして…猫を飼う」は、14年と少しを一緒に過ごした老犬タムの最後の日々を描いた「犬を飼う」と、タムを看取ったあと1年ほどが過ぎて猫を飼い始めることになった「そして…猫を飼う」の他、猫を飼い始めてからの日々を綴った「庭のながめ」、「三人の日々」の読み切り2篇と、谷口家で実際に飼われていたサスケという犬について書いたエッセイ、戦争に翻弄される犬と家族を描いた「百年の系譜」などが収録された作品集であり、1992年に刊行された「犬を飼うと12の短編」に収録された作品の一部抜粋、再編集したものとなっている。

「犬を飼う」に描かれる老犬タムの姿には、切なさを感じずにはいられない。足腰が弱り、歩くことはおろか次第に立つことすらままならなくなるタムは、それでも懸命に生きようとしている。寝たきりになったタムは糞尿を垂れ流し、悲しそうに、そしてなによりも飼い主夫婦に対して申し訳なさそうに鳴く。それは「鳴く」よりも「泣く」と記した方がいいのかもしれない。

本書に1992年刊行の「犬を飼うと12の短編」という作品集に収録されたエッセイ「思い出すこと」の中で、谷口ジローは、当初「犬を飼う」は子犬の頃からの成長を描くつもりだったと記している。ただ、読み切り作品という制約もあって、老犬の最後の日々に絞って描くことにした。それが作品としての凝縮度やテンポを高め良い結果となったとも記している。

家に犬や猫がいるという生活は、やはり特別なのだと本書を読んで思った。我が家は、父が犬好きだったため私が小さいときからいつも犬がそばにいた。犬を飼っていなかったときもあるけれど、それも全部合わせても3年くらいだと思う。もう、犬がそばにいない生活は想像ができない。

それだけに、タムを看取った夫婦が1年後には猫を飼うようになる流れは心から共感できる。

「犬好きなら次に飼うのも犬じゃないの?」

という考えもあるだろうけど、人間も年齢を重ねていくと毎日散歩が必要な犬を飼うのは難しかったりする。散歩の必要がないだけでも、犬より猫の方が飼いやすいと思う。もちろん、自分が残り何年生きていられるかは十分に考えないといけないだろう。飼い主の方が先に死んでしまってはいけない。犬や猫をキチンと最後まで世話して看取ってやるまでが飼い主の責任だということは、絶対に忘れてはいけない。