タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

井上理津子/協力・安村正也「夢の猫本屋ができるまで」(ホーム社)-『猫が本屋を助け、本屋が猫を助ける』をコンセプトに、素敵な猫本と素敵な店員猫たちに出会える店ができるまで、そしてこれからの未来。

『Cat's Meow Books(キャッツミャウブックス)』に初めて行ったのが何時だったか確認しようと思い、2017年に撮影した写真のデータをクラウドの保管フォルダで検索してみた。

2017年10月8日

それが、私が初めて『キャッツミャウブックス』に行った日だった。ちなみにスケジュール表でも確認したら、その日は日曜日で、私は戸越神社で開催された一箱古本市に行き(このとき『本好きあるある栞』の栞文庫さんに初めてお会いした)、下北沢の『クラリスブックス』に行き、豪徳寺に当時開店したばかりだった『ヌイブックス(現在は閉店)』に行ってから『キャッツミャウブックス』に行っている。

日付の記憶は曖昧だったが、初めて『キャッツミャウブックス』に伺ったときのお店の様子は鮮明に覚えている。店内はお客さんで溢れ、店員猫たちがいるはずの奥の部屋は入る余地のないくらいだった。あぶれたお客さんの何人かは手前の新刊コーナーでドリンクを飲んでいた。私は、「ずいぶん賑わってるな」と驚き、新刊コーナーで少し本を物色して2冊の本とお店の缶バッチを購入して帰った。初訪問時の滞在時間は、たぶん15分くらいだったかと思う。

本書「夢の猫本屋ができるまで」は、三軒茶屋の住宅街に建つ猫本屋『キャッツミャウブックス』ができるまでとできてからの歩みを追ったノンフィクションであり、本屋業界も出版業界も未経験の会社員である安村正也さんがどのようにして店のコンセプトを固め、費用を試算して調達し、物件を探し、リノベーションをして本屋として立ち上げたのかを記した起業・開業のための参考書である。

けっこうハードだし濃い内容の本だ。その分、「自分の店を持ちたい」「何かビジネスをはじめたい」「副業にチャレンジしたい」という読者には、とても参考になる。もちろん、私のようなただの本好き・本屋好きにとっても、ひとつのお店ができるまでのサクセスストーリー(と書くと安村さんは否定するかもしれないが)として楽しく読める。

著者の井上理津子さんは、本書内でも繰り返し書いているが犬派の人だ。そのためか、ところどころでお店にやってくる猫派の行動を興味深く観察して記録している。

『キャッツミャウブックス』には、店長猫の三郎と店員猫のチョボ六(キジシロ)、さつき(クロ)、鈴(キジトラ)、読太(キジトラ)がいる。ちなみに、読太の読みは「ヨンタ」である。犬派の井上さんは何回通っても猫の見分けがつかない。ところが、猫派のお客さんたちは初めてお店に来た人でもすぐに猫店員たちを見分けてしまうことに驚かされる。そして、猫派のお客さん同士が一緒になると初めて会う人同士でもすぐに打ち解けて猫自慢が始めることに驚く。

私も家では犬を飼っていて、猫よりは犬の人なので、猫好きの人たちが集まったときの妙な連帯感に驚くことがしばしばある。その点、井上さんが感じたことには共感できるところがあった。

読んでいて絶えず感じていたのは、安村さんの一途な思いだ。ご自身の体験から保護猫の活動を支援したいとの思いを強くし、猫のための本屋を作ろうと決めてから、企画を練り、様々な人たちと協力しあい、夢を現実のものとしていく。その行動力はまさに有言実行である。やりたいことを諦めないことが大事なんだと、ポジティブに考えることが大事なんだということを教えられた。

2017年10月に初めて伺って以降、『キャッツミャウブックス』を訪問した回数はあまり多くない。たぶん5回くらいだと思う。というのも、私は千葉に住んでいて職場も品川のあたりなので、三軒茶屋にあるお店にはなかなか気軽に足を向けることができなかったからだ。最近になって、渋谷から千葉まで行くバスが運行されるようになった。三軒茶屋から渋谷は電車で数分だし、バスは1時間ほどで渋谷と千葉を結んでくれる。

ということで、今後はもう少しチョイチョイとお店に伺うことができそうだ。安村さんとは、猫の話もそうだが、本の話もしてみたい。そう、ビールジョッキを片手に。