タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「中くらいの友だちVol.1」(韓くに手帖舎・発行/皓星社・発売)-韓国の魅力と味力。韓国文学翻訳家や韓国在住のライターたちによる韓国を楽しみを伝える雑誌の創刊号

 

中くらいの友だち (韓くに手帖)

中くらいの友だち (韓くに手帖)

 

「『中くらいの友だち』へ」と題された創刊の言葉に、本書を創刊した理由がこう書かれている。

1.まずは、日本では政治やイデオロギー、あるいはスキャンダルで扱われることの多い韓国ですが、そこから少し離れて、文化を真ん中にして語り合いたい。
2.また、ネットの世界からしばし暇をいただき、丁寧に物事を考えるために、紙の本が必要。
3.売らんがためではなく、自由に書けるメディアがほしい。ならば、自分たちで作ってしまおう。

エッセイあり、マニアックな建物探訪記あり、摩訶不思議な人物伝あり、翻訳小説あり、料理あり。「創刊の言葉」にあるように『韓国の文化を真ん中にして、韓国を楽しみ、味わい、語り合う』ためのあれやこれやがたっぷりと詰まった一冊だ。

編集委員のひとりであり、韓国在住25年になるフリーライター伊藤順子さんの「ソウル鞍山物語~マスター・リーの深くて青い夜」が面白い。伊藤さんが出会った不思議な老人の話だ。マスター・リーと呼ばれる彼は、韓国系アメリカ人のテコンドー・マスターなのだという。

彼こそは大山倍達がその著書に記した「60年代に米国に進出した700人のテコンドー師範」のひとりなのではないか!

伊藤さんは興奮し、彼から話を聞きたいとアポをとる。そして、ようやくマスター・リーのインタビューを行えることとなるのである。その顛末と彼の波乱の物語は、本書だけでは終わらない。続きが気になるところだ。

カフェのオーナーであり料理研究家のきむ・すひゃんさんの連載「韓国の美味しい知恵」の第一回は、「春の草」と題し、韓国ではポピュラーな『草=野草や山菜』の料理についてのエッセイになっている。

韓国では「ナムル」は料理法のみならず、食べられる全ての草や木の芽、葉、根の総称だ。

というのは思わず「へぇ~」となってしまった。私にとって『ナムル』は、もやしやほうれん草、ぜんまいなどを茹でてごま油などと和えた惣菜のイメージしかないからだ。

エッセイの中では、『きつねあざみ』という草の調理に悪戦苦闘する様子が記される。テンジャンクッというスープを作るのだが、生のきつねあざみはとにかく苦いらしく、その苦味をとるための下ごしらえに丸2日もかかっている。だけど、それだけの苦労を経て出来上がったきつねあざみのスープは、とても美味しいのだ。

韓国文学が多く翻訳出版されるようになり、韓国の文化的な部分はそうした文学作品を通じてだいぶ身近に感じられるようになってきた。今回、本書を読んで、より具体的に韓国の楽しみ方や食文化などに触れられたのが良かった。

「中くらいの友だち」は、現在Vol.3まで発刊されている。続きの気になる連載を追いかけて、Vol.2、Vol.3も読んでみよう。

中くらいの友だち Vol.2 (韓くに手帖)

中くらいの友だち Vol.2 (韓くに手帖)

 
中くらいの友だち Vol.3(韓くに手帖)

中くらいの友だち Vol.3(韓くに手帖)