タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

石橋毅史「本屋な日々 青春篇」(トランスビュー)-本屋がこんなに頑張っているんだから、私たち読者も本屋をもっと応援しようじゃないか!

私が中学生、高校生の頃は、学校の通学路の途中に必ず本屋があった。こじんまりした規模で、雑誌、単行本、文庫本、マンガ、それと学生が利用するからか参考書や問題集が充実していたように思う。

子どもの頃から本が大好きだったから、学校の帰りには本屋に立ち寄るのがほぼ習慣になっていた。もちろん、少ない小遣いの学生だから、立ち寄るたびに本を買うなどというわけにはいかない。それでも、店頭に並んだ本を飽きずに眺め、マンガや雑誌を立ち読みし(当時のマンガ本はビニールでパッケージされてなかった)、友人たちと読んだ本の話で盛り上がったりした。本を買ってくれるわけでもなく、店内でギャアギャアとうるさく騒がしいバカたちを店主はきっと迷惑に思っていたかもしれない。だけど、ときに度が過ぎたときに怒られたりしたけれど、おおむね優しく見守ってもらえていたように思う。勝手な考えかもしれないけれど。

とにかく、本屋にいる時間は楽しかった。でも、そんな思い出のある楽しかった本屋は、今一軒も残っていない。今、私の地元には、私の家の最寄り駅前にあるスーパーにテナントで入っている売り場の半分以上が文房具売場の小さな本屋しかない。先日ひさしぶりに隣り駅に行ったら、そこにあった少し大きめの本屋さんも閉店して空き店舗になっていた。ある程度の大きさの本屋さんは、私の家の近くにはなくなってしまった。

本書「本屋な日々青春篇」には、様々な本屋、様々な書店員が登場する。著者は、全国にある本屋を訪ね、彼らと話をし、本屋のあり方や書店員のあり方について対話する。それはときに一方的な押しつけのようでもあり、書店員としての矜持を引き出す対話でもある。

本屋が加速度的に減少していく一方で、本屋を守り抜こうとしている書店員や新たに本屋を開こうという人もいる。甘い考えかもしれないが、そういう矜持をもった人たちがいる限り本屋という場所が消えてしまうことはないのだろうと思える。

ただ、彼らの奮闘だけでは本屋を存続させることは難しい。本屋は、客が商品である本を買ってくれることで経営が成り立つ。個性的で特徴的な本屋であっても、来てくれた客が商品を買ってくれなければ生活はできないのだ。

そういう意味で、最近注目しているサービスがある。『リトルスタッフ』というサービスだ。

www.littlestaff.jp

単純に言えば「好きな本屋を応援するサービス」である。このサービスをコンセプトについては、開発者ブログのこちらの記事に詳しい。

little-staff.hatenablog.com

まだ立ち上がったばかりで不安な面もあるサービスではあるが、本屋を全力で応援するという考えには賛同するところが多い。本屋=本を買う場所、と考えると本屋による本の紹介(選書)に対して課金することには抵抗を感じるという意見もあるだろう。そういう意見も受けながら、リトルスタッフの開発者も、また参加している本屋もより良いサービスとはなにかを試行錯誤し、知恵を出し合っている。そこには、私たち利用者の意見も必要になってくると思う。本屋、利用者、開発者がそれぞれに考えるべき課題なのだと思う。

本書を読んでいると、今の本屋が置かれている状況は確かに厳しいと感じる。読書が娯楽の王道にいた時代とは全然違う中で本屋を続けることは本当に難しいと思う。

それでも、こうして本屋を続けている人たちが全国にいる。彼らを全力で応援することが、私のような読者の役割なんじゃないかと改めて思った。そのために、本屋に足を運ぶこと、リトルスタッフのようなサービスで本屋を応援すること、そして何より本屋で本を買うことを続けていきたい。