ガタガタ書評ブログ

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池田浩士「【増補新版】抵抗者たち-反ナチス運動の記録」(共和国)-ナチスドイツの恐怖による独裁政治に抗った抵抗者たちの記録

いつの時代にあっても、権力者は自分が手にした強大な力を自分の自由に使えるものと勘違いするようだ。また、権力者の側にいるというだけで自分にも力があると思いこんでいる矮小な輩というのもいる。

権力者による勘違いが害のないレベル(そんなレベルがあるのかわからないが)に留まっている分には、笑い話で済むかもしれない。だが、ヒトラーのように徹底的に誤った方向に舵を切り、ファシズムという最悪のレベルに至ってしまった場合、それは悲劇しか生み出さない。

本書は、ファシズムに抗い闘った抵抗者たちの記録だ。ファシズムという強大な権力に立ち向かった彼らは、悪を悪として糾弾し、正義のために闘ったのだ。そこには、強い意志の力が感じられる。

ナチスの恐怖政治の前に人々は無力だ。恐怖によって人心を掌握し、抵抗する者には厳しい弾圧と加え、たくさんの人々が粛清された。権力に反対する言論は徹底的に封鎖し、反体制的な書物は焚書とされた。メディアは権力に都合の良いことだけを垂れ流し、人々の洗脳に力を貸した。逆らえば自分の命が危ない。となれば、無力な民は権力の足下に額ずくしかなかった。

だが、すべての民がファシズムに屈したわけではない。抵抗者は、数々の弾圧、粛清に屈することなく、正義を貫き通した。彼らはファシズムに敢然と立ち向かい続けた。戦いに敗れ、粛清された者もあった。それでも、彼らが示した抵抗する意志の力は、少しずつ人々の中に浸透していき、やがてナチスドイツの凋落とともに勢いを見せる。

本書は、ファシズムに立ち向かった人々の記録だ。この本が、日本の研究者によって書かれたことに驚く。

1980年に初版が刊行されてから40年近い年月を経た本書が、2018年の今、私たちのもとへ届けられたことは大きな意味があると感じる。

本書を読みながら常に感じていたのは、今の時代の日本に生きる私たちを取り巻く政治的な環境がところどころでファシズム的な一面を有しているということだった。もちろん、ナチスドイツが行ってきたファシズム現代社会とはまったく違う。それでも、権力におもねっているのではないかと疑わせるような偏向的なメディアの報道姿勢や権力という虎の威を借りて罵詈雑言を投げつける人々の存在、性別や人種、マイノリティに対するヘイススピーチ等々、民主的で平和的であるとは言い難い状況があるのは間違いないと思うのだ。

私たちは、いつでも言いたいことを言う権利があるし、政権を批判することも擁護することも自由だ。権力者を心から信頼し支持する者があれば嫌悪する者もある。そうした個人の思想信条も含めてすべては自由なのだ。この自由な社会に私たちが生きていられるのは、かつて権力の圧力に抗って闘った抵抗者たちが勝ち取ったものなのだ。

権力を持つというのは、なんでも自分の思う通りに動かしていいという意味ではない。あらゆることを思うままにできる権力を与えられたからこそ、自らを律して行動しなければならない。そして、私たちは盲目的に権力者を信じるのではなく、権力者を疑い監視する目を持たなくてはいけない。ファシズムに抗った抵抗者たちの記録を読んで、そう思った。