タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

ジョゼ・ジョルジュ・レトリア文、アンドレ・レトリア絵/宇野和美訳「もしぼくが本だったら」(アノニマ・スタジオ/KTC出版)-わたしが本だったらなにを願うだろう。わたしの本たちはなにを願っているだろう。

小田急線の豪徳寺駅を下りて数分、住宅街の中に『ヌイブックス』という一軒の小さな本屋さんがあります。こじんまりとした店ですが、店主さんのセンスが感じられる素敵な棚に並ぶ本や雑貨の数々はとてもおしゃれです。

f:id:s-taka130922:20180318135227j:plain

この本「もしぼくが本だったら」は、ヌイブックスの棚の下の方に何気なく並べられていました。見つけたときすぐに「これは絶対に買うべき本だ」と感じました。

もしぼくが本だったら

 

このフレーズからはじまる28の言葉たちは、本が好きな人ならばきっと共感できる言葉たちです。

もしぼくが本だったら
つれて帰ってくれるよう
出会った人にたのむだろう

 

もしぼくが本だったら
ぼくのことを〈友だち〉とよぶ人に
夜がふけるまで読まれたい

わたしがこの本とヌイブックスの棚で出会ったように、本もわたしたちとの出会いを待っています。出会った本を抱えて家に連れて帰るときのワクワクした気持ちは、何ものにも変えられません。そして、その本のページを開いたら、きっと時間の概念はどこか遠くへ消えてしまうでしょう。

もしぼくが本だったら
本棚のかざりにするのは
かんべんしてほしい

 

もしぼくが本だったら
流行や義務で
読まれるのはごめんだ

楽しくなる、嬉しくなる言葉ばかりじゃありません。ときに、胸に刺さる厳しい言葉もあります。ついつい調子に乗ってたくさん本を買ってしまうわたしには、「本棚の飾りにはしないで」と願う本たちの声に、いつも申し訳なく思っています。いつかきっと読んであげるよ、と誓うけれど、読めない本が増えるばかり。

「有名な文学賞を受賞したから」とか「ベストセラーとして評判だから」とか、ふだん本をあまり読まない人の中にはそういう理由で本を手に取る人もいるでしょう。出版不況といわれている中で、どんな理由でも本を手にして買ってもらえるのは嬉しいことかもしれません。でも、やはり本は読んで欲しがっているのです。買った本は読んであげて欲しいと思います。と、わたしのように読めない本をたくさん抱えている人が言っても説得力はありませんね。

本との出会いは一期一会です。この本「もしぼくが本だったら」と出会えたこともそうです。そして、その出会いの場となってくれたヌイブックスさんや、他のたくさんの本屋さんとの出会いも大切な出会いだと思うのです。本屋さんには、きっとたくさんの本との出会いがあるのです。だから、わたしは本屋さんに行き、そしてたくさんの本と出会うのです。