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西島大介「アオザイ通信完全版#2~歴史と戦争」(双子のライオン堂)-ベトナムを描くエッセイマンガの第2巻。テーマは『歴史と戦争』です。重いテーマですが、ベトナムという国を理解する入門書になると思います。

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双子のライオン堂から全3巻で刊行される西島大介のコミックエッセイ「アオザイ通信完全版」の第2巻。今回は、ベトナムの歴史と戦争をテーマにした作品が収録されている。あと、前巻からの続きとなるロングインタビューの後編。

アオザイ通信」に描かれるベトナムの歴史は、欧米列強によるアジア植民地政策の歴史でもある。イギリス、フランス、スペイン、オランダといったヨーロッパの国々は豊富な資源の獲得と領土の拡大を目的にアジア、アフリカへと進出した。ベトナムは、19世紀後半にフランスの植民地となり、第二次世界大戦後にベトナム民主共和国として独立を宣言する。そこから、ベトナムの長い戦争の時代がはじまっていく。フランスからの独立戦争インドシナ戦争)におけるディエンビエンフーの戦いに勝利したが、ここでベトナムは南北に分断される。そして、南北ベトナムの対立にアメリカが軍事介入したことから泥沼のベトナム戦争へと突入していく。

アオザイ通信」でも、ベトナム戦争に関することが多く描かれている。ベトコンによるブービートラップのこと。若い兵士が多数参戦した戦争という特異性。ボートピープルと呼ばれた難民たち。倫理観なんて存在しない残酷な場面を切り取った報道。そういった戦争によって引き起こされる様々な悲劇や残忍さを私たちに伝えている。

もともと、ベトナム戦争を舞台にした「ディエンビエンフー」のおまけマンガとして描かれたのが「アオザイ通信」な訳で、ベトナムの歴史やベトナム戦争のことが描かれるのは必然であろう。本編の「ディエンビエンフー」では描き切れなかったベトナム戦争の事実を読者に伝えることも、著者として考えていたのかもしれない。

ロングインタビュー後編について書いておきたい。

「アオザイ通信完全版#1」に掲載されたインタビュー前編では、西島大介というマンガ家が誕生し、どのような活動を行ってきたのかが語られてきた。それもかなり話があちらこちらと脱線しながら。その脱線ぶりが面白かったのだが、その反面で「ちゃんとまとまるんだろうか?」と多少不安さも感じながら読んでいた。まあ、発散してまとまりなく終わるならそれはそれで面白いかも、などと無責任な期待もあったんだけどね。

本書に収録されているインタビュー後編では、「ディエンビエンフー」について語られている。ほぼ脱線していない。良かった、ちゃんとまとまっている(笑)

ディエンビエンフー」連載のきかっけとか、掲載誌を転々とせざるを得なかった経緯、「TRUE END」を描くことになった理由や思い描いているラストについて語っている。このロングインタビューは、西島大介という作家の大切な記録となっていると思う。私は、前後編を読んでみて、西島大介という作家の作品に対する興味が深まった。やはり「ディエンビエンフー」は読んでおきたい。(「アオザ通信完全版#1」のレビュー中で『第1巻のKindle版を入手した』と書いているが、その後第6巻まで購入した)

さて、「アオザイ通信完全版」も次の「#3」で完結する。第3号のテーマは「旅!?」とある。いやいや、その「!?」が気になるんですけど(笑)

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ディエンビエンフー(1) (アクションコミックス)

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ディエンビエンフー(2) (アクションコミックス)

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