ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

「ししししvol.1~特集・宮沢賢治」(双子のライオン堂)-『草獅子』が名前を変えてリニューアル。新生文芸誌の特集は〈宮沢賢治〉です。

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昨年(2017年)、はじめて伺わせていただき、それからも何度か顔を出させていただいてる双子のライオン堂は、自ら出版業も手がけている。先だってレビューした西島大介アオザイ通信完全版#1」も双子のライオン堂の出版物だ。

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この「しししし」も双子のライオン堂が刊行している年刊の文芸誌である。もともと、2016年に刊行された「草獅子」という文芸誌があったのだが、今回その「草獅子」を受け継ぎ、かつ全面的にリニューアルする形で新しい文芸誌として「しししし」が刊行された。なので、「草獅子」の次号予告にあった『宮沢賢治特集』がそのまま「しししし」の特集となっている。

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年末12月29日の最終営業日に、取り置きをしてもらっていた本書「しししし」と先日〈本が好き!〉の投稿500本目のレビューとなった伽鹿舎「戦争の法」を入手し、年明けから読み始めた。この手の文芸誌は、一気呵成に読む感じではないので、少しずつ読み進めてきたところだ。

 

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全体を読み終わって感じるのは、『文芸誌をどう創るか』という創造性に対する編集メンバーの想いである。それは、本誌の編集に携わったメンバーの想いであるとともに、文芸誌を受け取る側である私たち読者の想いでもある。

私自身、文芸誌というものを熱心に読むことはあまりない。月刊文芸誌を定期的に購入することもない。今のところ定期的に購入しているのは、書肆侃侃房から刊行されている「たべるのがおそい」だが、これは厳密にいえば文芸誌よりはムック本に近いと思う。(実際に「文学ムック」とあるし)

そんな中で、『書店発の文芸誌』である「草獅子」や「しししし」は、これまでの文芸誌とは違う視点から創られ、私たちに違う視点での文芸誌の楽しみ方を示してくれるのではないかという期待がある。それは、クリエイター側も考えていることで、「しししし」の創刊に関する彼らの想いは、「巻頭言」にすべて記されていた。

本誌の内容について簡単に。

『特集・宮沢賢治』では、長野まゆみさんのエッセイ、室井光広さん、山下聖美さんによる宮沢賢治論、宮沢作品の読み方に関する評論、吉本隆明氏による宗教論的作品解題、くれよんカンパニー、坂口尚さんによる宮沢作品を原作にしたマンガ、「銀河鉄道の夜」、「フランドン農学校の豚」を題材とした読書会が収録されている。

中でも、個人的に読み応えがあったのが、山下聖美さんの「宮沢賢治の〈読み〉をめぐって」である。

日本人ならば誰でも知っているであろう宮沢賢治。(中略)そして多くの人々が口をそろえて言うのが「なんだか不思議というか、よくわからない感じがするのですが」という疑問だ。(中略)しかし一方で、「なんとなく、すごくわかる」感覚を抱かせてしまうのが宮沢賢治という作家の特徴だ。

この冒頭からの数行で、私たちが宮沢賢治という作家の作品から感じている漠然とした印象が表出されていると思う。

「よくわからないけれど、なんだかすごくよくわかる気もする」

という感覚が、宮沢賢治という作家の醸し出す印象でもあるように思える。この感覚の正体を、山下さんは短い文章の中で探し求めていくのだ。

その他、生前の著作から再録された吉本隆明氏の「宮沢賢治銀河鉄道の夜』」も、賢治が傾倒した日蓮宗と作品との関連性や融合性を踏まえた賢治の創作における宗教性の存在論も読み応えがあった。

特集以外にも、単価や詩歌、小説などの創作があり、一般から公募した「本屋の思い出エッセイ」の入選作品も掲載されている。また、「本屋日録」は双子のライオン堂の他、BOOKS青いカバ、書肆スーベニアなどの本屋さんのある一ヶ月の日常が記されていて面白い。全部で12軒の本屋さんの日常が記されているのだが、実店舗をもたない劃桜堂の日常は他と比べて毛色が違っていて逆に目立っていた。

ところで、本誌のタイトル「しししし」だが、とても個性的で印象的なので覚えやすくていいタイトルだ。双子のライオン堂が発行している文芸誌なので、ライオン=獅子で双子ということで「獅子獅子」をひらがな表記して「しししし」としたのかもしれない。これについても「巻頭言」ですこし言及されている。

年刊ということだからかもしれないが、本誌には次号予告はない。しかし、1年後にはまた何か面白い企画を掲げて「ししししvol.2」が刊行されるのだろう。それを期待して2018年末の刊行を待ちたいと思う。もしかするとタイトルが「しししし」ではなくなっているかも、というわずかな疑念を胸の片隅に抱きながら。