ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

フランシス・ハーディング/児玉敦子訳「嘘の木」(東京創元社)-読み始めたらやめられない!ノンストップ・エンターテインメント小説!!

 

とにかくやたらと評判がいい。

フランシス・ハーディング「嘘の木」のことだ。プロの作家、翻訳家、書評家からアマチュア書評家にブロガーと、私が確認している範囲でこの作品を酷評しているのは見たことがない。2017年最高傑作という声もある。

「嘘の木」はファンタジー小説だ。といっても、ハリー・ポッターとかナルニア国とか、そういう王道のファンタジーとは異なる。ファンタジー小説ではあるけれど、ファンタジー色よりはミステリ色が強い。そして、そのミステリ小説としてのストーリーが評判に違わず本当に面白いのである。私は、週末の夜から読み始めたが、寝る時間になっても読むのをやめられず結局徹夜して読み通してしまった。本を読んで徹夜したのはずいぶんと久しぶりである。

簡単にストーリーを。

 

主人公は、フェイス・サンダリーという14歳の少女。父親であるエラスムス・サンダリー(サンダリー師)の影響から博物学を愛し、様々な知識を有している。家族は他に母のマートルと弟のハワードがいる。一家は、サンダリー師が発見した翼のある人類の化石で一躍時の人となるが、それが捏造であるとの噂があり、そこから逃れるかのようにヴェイン島に移住する。しかし、噂は彼らを追って島にも流れ、またサンダリー師の態度も相まって一家は島でも孤立を深めていく。

そして事件は起こる。サンダリー師が死亡し、それが自殺であると噂が流れる。父親を敬愛するフェイスは、父の遺品の手記から、嘘を養分として育ち、その実を食べた者に真実を見せるとされる〈嘘の木〉の存在を知る。父が隠していた嘘の木に嘘を吹き込むことで、フェイスは父が死んだ真相を探り出そうと考える。

「嘘の木」は、2015年に『コスタ賞』というイギリス・アイルランドの作家を対象とする文学賞で児童部門賞を受賞している。児童向けの作品なので読みやすいし、登場キャラクターたちも善人は善人らしく、悪人は悪人らしく描かれていてわかりやすい。それでいて、ストーリーは抜群に面白いので、予定調和的な人物設定がまったく欠点になっていない。読んでいると、フェイスたちに冷たくあたる島の住民たちが本当に憎たらしく感じられ、その反面主人公フェイスの利発さと心の強さが対照的に描かれているので、フェイスを心から応援したくなる。彼女を支えてくれるはずの母マートルの頼りなさ、まだまだ手のかかる弟ハワードの時に微笑ましく時に疎ましい存在感は、読者は常にイライラ、モヤモヤさせる。

骨格となるストーリーだけを抜き出してみれば、案外オーソドックスな話である。悪人はキチンと最後に報いを受けるし、主人公たちは次の未来に向かって歩き出す。基本ストーリーがわかりやすいからこそ、そこに肉付けされたキャラクター像やギミック、サブストーリーが物語の魅力を支えることになる。

「嘘の木」がこれだけ評判が良い理由がよくわかった。この作品は、2017年翻訳小説でトップ3に入る傑作である!