ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

リチャード・マグワイア/大久保譲訳「HERE(ヒア)」(国書刊行会)-固定された視点から見えるもの。時代の流れ、変わりゆく風景、家族の歴史。

 

見開きページに描かれているのは、とあるリビングルーム。窓際に置かれたソファと壁には暖炉がある。ページの左上には〈2014〉と年代が記されている。

ページをめくると同じ部屋に、書棚と荷物をあけたと思しき段ボール箱がひとつあり、窓際のソファがなくなっている。年代は〈2014〉とある。

このまま、2014年の部屋の風景を時間の経過で描いていくのだろうか。そう考えてページをめくると部屋の風景が変わっている。部屋の壁紙が、黄色から赤い植物柄のものになり、ソファがいくつか置かれ、部屋の真ん中にはベビーサークルが置かれている。左上の年代を見ると〈1957〉とある。

 

リチャード・マグワイア「HERE(ヒア)」は、固定した場所から見た風景を描くグラフィック・ノベルだ。時代は、2014年から始まり、1957年、1942年、2007年と行ったり来たりする。その流れの幅は、紀元前3,000,500,000年から22,175年まで。その長い長い時間の中で、固定された視点から見た風景は様々に形を変えている。

見開きがひとつの年代だけを描いているわけではない。右と左で違う年代が描かれていたり、大きくひとつの年代の風景を描く中に、違う年代のコマが重なって描かれていたりする。1600年代、1700年代のまだ家が建てられていない場所の絵の中に、1900年代、2000年代のリビングルームにくつろぐ家族の姿や犬や猫の姿が描かれる。

全体を通じたストーリーのようなものはない。ただ、固定視点から見えるものだけが混じり合うように描かれる。時間を前後に行きつ戻りつする中で、時代はどう流れていたのか、風景はどう移り変わっていたのか、家族にはどのような歴史が刻まれたきたのかが記録されている。

何度も繰り返し読みたくなる本だ。1回読む間にも、前に戻ってみたり、少し飛ばして先を見てみたりしたくなる。最初から順番に読んでいくよりも、気が向いたページを開いて、そこに描かれていることを読み解くのが面白いタイプの本だ。

大判の判型でお値段も5000円くらいとなかなか手に取りにくい。購入するのは難しくても、一度読んでみて欲しい本だ。図書館で借りて読んでみてもいいと思う。そして、手元に置いておきたいと思ったら、思い切って買ってしまおう!