ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

アンドルー・ラング/ないとうふみこ訳「夢と幽霊の書」(作品社)-19世紀末ロンドンで設立された心霊現象研究協会メンバーの著者が集めた様々な幽霊譚。ロンドン留学中の夏目漱石も愛読したという古典が120年を経て本邦初訳!

ルイス・キャロルコナン・ドイルらが所属した
心霊現象研究協会の会長による幽霊譚の古典、
ロンドン留学中の夏目漱石が愛読し
短篇「琴のそら音」の着想を得た名著、
120年の時を越えて、待望の本邦初訳

これは、本書「夢と幽霊の書」の帯に記された惹句の引用である。

「夢と幽霊の書(原題:The Book of Dreams and Ghosts)」は、タイトルの通り〈夢〉と〈幽霊〉に関する物語が収録されている。これらは、著者が集めた話であったり、昔から語り継がれてきた民間伝承の物語だったりする。

「第1章 夢」に始まり、幻視、幻覚、生き霊、死霊、幽霊、幽霊屋敷と、科学では説明のつかないような不思議な経験や伝説が次々と披露される。

 

夢、幻視、幻覚では、未来に起きる出来事を予言する予知夢であったり、遠く離れた場所で起きている事件の透視であったりする。無意識に見る夢や水晶玉の向こうに透けて見える場面が、現実となるという話には、いくつものバリエーションがあって、読んでいて惹き込まれてしまう。

幽霊や幽霊屋敷の話にも同様にバリエーションがあり、病の床で死を迎えようとする母親が死の直前に遠くに住む子どもたちのところへ現れたり、人知れぬ場所で殺された人が自分を探して欲しいと見知らぬ相手のところに姿を現したりする。屋敷に取り付いた霊たちがその住人を驚かせたり、不思議と共生していたりする。

冒頭で紹介した帯文の引用にある〈心霊現象研究協会〉は、1882年に設立された心霊現象を蒐集し研究する機関だそうで、アンドルー・ラングは設立メンバーでもあるという。この協会には、「ふしぎの国のアリス」の著者ルイス・キャロルや、シャーロック・ホームズの生みの親であるコナン・ドイルもメンバーとして所属していたそうだ。これは想像だが、ラングは協会メンバーや関係者から、本書で紹介した数々の幽霊譚を蒐集したのだろう。

コナン・ドイルの名前がでたところで、本書を読みながら思い出したことがある。かなり昔に「妖精写真」という本を読んだ。内容はほとんど忘れているのだが、妖精の写っている写真にまつわる話で、実話に基づいていたのではなかったか。その妖精写真にまつわる実話にドイルが関わっていたのではなかったか。そう思っていたら、巻末の訳者あとがきにドイルが贋作の妖精写真を信じ込まされた事件のことが紹介されていて(コティングリー妖精事件)、やはり有名な事件であったことを知った。

本書を購入したのは、ほんのちょっとした偶然だ。書店の新刊棚で見つけ、帯の惹句に誘われて購入した。すると、直後に書評サイト「本が好き!」で、やまねこ翻訳クラブ20周年を記念する読書会がスタートした。そして、やまねこ翻訳クラブのメンバーリストに訳者のないとうふみこさんの名前を見つけ、代表訳書に本書が紹介されていた。その後、丸善丸の内本店で開催されたやまねこ翻訳クラブ20周年記念のイベントに参加することになり、会場でないとうさんご自身とお会いする機会を得ることができた。

こうして本書を読み終えてみて、改めて一連の流れを振り返ってみると、偶然の出来事なのだけれど、何かに導かれたような気持ちになってくる。そんな思いにかられるのも、本書を読んだ影響なのかもしれない。