賢治は、わたしたちには見えないものが見えるのです。
賢治は、わたしたちには聞こえない音が聞こえるのです。
賢治は、わたしたちには感じられない匂いが感じられるのです。
賢治は、わたしたちには触れられないものに触れられるのです。
賢治の目には、ちょっと怖いけれど、小さくて可愛い幽霊たちが遊んでいる姿がみえます。
賢治の耳には、ときに恐ろしげだけど、本当はとても優しい幽霊たちの笑い声が聞こえます。
賢治は鼻から、そっと吹く風にのって流れてくる妖かしの匂いを胸いっぱいに吸い込みます。
賢治はその手で、もののけたちの冷たいような温かいような肌の感触を確かめます。
だけど、わたしたちには、賢治のように世界を感じることはできません。
だけど、賢治はわたしたちにすてきな贈り物をのこしてくれました。
賢治は、自分が見たものを言葉にしてくれました。
賢治は、自分が聞いた声を言葉にしてくれました。
賢治は、自分が感じた匂いを言葉にしてくれました。
賢治は、自分が触れた感触を言葉にしてくれました。
賢治が言葉にしてくれたから、わたしたちは賢治が生きた世界を同じく生きることができるのです。
賢治は、幽霊や幻のことを物語にしました。
賢治は、もののけのことを物語にしました。
賢治は、不思議な場所のことを物語にしました。
賢治が誘う妖かしの世界は、わたしたちを想像の世界へと誘います。
幽霊、幻、もののけ、不思議な場所。思わず背筋が寒くなったり、足がすくんだりするかもしれません。
だけど、怖がることなんてありません。
賢治の言葉が紡ぎ出す物語は、怖さとともに優しさにあふれていますから。
だから、怖がらずに本の扉を開きましょう。賢治の言葉を感じましょう。妖かしの世界に一歩踏み出しましょう。
賢治が誘う妖かしの世界から戻ってきたら、現実の世界の方が怖いと感じてしまうかもしれません。