ガタガタ書評ブログ

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美谷島邦子「御巣鷹山と生きる~日航機墜落事故遺族の25年」(新潮社)-日航機墜落事故から32年。あの事故を語り継ぐことが空の安全に繋がることを信じて

御巣鷹山と生きる―日航機墜落事故遺族の25年

御巣鷹山と生きる―日航機墜落事故遺族の25年

 

1985年8月12日乗員乗客計524名を乗せた日航ジャンボ機123便羽田発伊丹行の飛行機が突如操縦不能に陥り、約32分間迷走した後群馬県御巣鷹山の尾根に墜落した。死者520名生存者4名。単独機の事故としては現在でも世界最大の惨事である。

著者は、この事故で当時9歳の次男・健を失った。健は初めての飛行機で大阪の親戚の家に遊びに行く途中だった。

 

事故を知らせを受け、御巣鷹山に向かい、無残に変わり果てた息子に対面したときの母親の気持ちはいかばかりであっただろうか。突然の喪失感。飛行機に乗せなければ良かったという後悔。様々な思いが去来したことであろう。

それは、著者だけではなく、共に犠牲になった他の遺族も同様であった。著者は、そんな遺族の間で共に支えあうための活動をはじめる。“8・12連絡会”と名付けられた遺族会は、遺族が孤独になるのではなく、お互いに気持ちを語り合い、協調して航空安全の実現を訴えていくことを基本理念とした。

www.neverland.co.jp

今年(2017年)で事故から32年が経過し、連絡会の活動も32年目を迎えた。連絡会の事務局長でもある著者は、7月に営まれた三十三回忌法要で講演し、被害者一人一人に寄り添う社会を作りたいと語った。

mainichi.jp

本書は、連絡会の事務局を務める著者が、自らの体験と連絡会の活動を通じた安全啓発活動の経緯、国や企業に対しての要望とその実現について綴ったノンフィクションである。

内容は、悲観的なだけではなく、国や企業に対して怒りを向けるだけでもない、冷静に綴られている。一体何が著者にこのような使命感を駆り立てさせたのか。それは、やはり著者自身の事故に対する想いと、他の遺族たちや事故現場で救助活動に従事した地元消防団や警察の方々に対する感謝、企業人としてではなく一個人として事故後対応にあたってくれた日航社員への感謝への恩返しということもあるのではないだろうか。

日本の運輸事故に対する取り組みは、日航機事故から32年が過ぎて少しずつ変わってきていると思う。ただ、事故遺族に対するケアという面では、まだまだこれからという印象がある。三十三回忌法要の講演の中で著者が語ったことを、国も企業も、私たち個人も考えていかなければならないと思う。事故から32年が経過して、日航機事故の記憶は私たちの中から薄れてきている。事故のことを知らない若い世代も多い。毎年8月のこの時期、戦争の記憶を語り継ぐとともに、日航機事故についても語り継ぎ、記憶を風化させないようにしていかなければならない。

s-taka130922.hatenablog.com

 

 

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

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