ガタガタ書評ブログ

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エリザベス・ストラウト/小川高義訳「私の名前はルーシー・バートン」(早川書房)-母と娘がはじめて心を通わせた5日間は、彼女の人生の大きな分岐点となった

私の名前はルーシー・バートン (早川書房)

私の名前はルーシー・バートン (早川書房)

 
私の名前はルーシー・バートン

私の名前はルーシー・バートン

 

 

物語の主人公はルーシーバートン。作家。これは、彼女が入院していたときの、5日間の話。彼女と彼女の母がはじめて心を通わせた5日間の物語。

 

ルーシーと母の関係は、必ずしも友好的ではない。イリノイ州アムギャッシュに暮らしていたルーシーの家庭は、大叔父の家の敷地にあるガレージに暮らしていた。貧しい家だった。

学校の図書室で本を読むことが好きになったルーシーは、次第に成績もよくなり、シカゴの大学に学費免除の特待生として入学することになる。そして、いくつかの出会いを経験し、夫となるウィリアムと出会う。そして、いつしかルーシーと両親の関係は疎遠になっていく。

親と子の関係というのは案外複雑なのかもしれない。いつまでも友だちのように仲の良い関係を続けられている親子もあれば、ルーシーのように成長して家を出て自分の家族を持つことで親子の関係が疎遠になってしまうこともある。どちらも本当の親子の姿なのだろう。

「私の名前はルーシーバートン」では、疎遠になっている母娘の関係が、娘の入院とどの病室に泊まり込む母との会話を通じて少しずつ回復していく様子が描かれる。ルーシーは、突然病室に現れた母の姿に驚く。長く会話のなかった母娘は、はじめのうち少しギクシャクしている。昔話を交わし、少しずつ距離を縮めていく中で、ルーシーは子どもの頃を思い返し、あの頃の家族の姿を回想する。

母娘が関係性を少しずつ取り戻していく中で、物語はルーシーの過去、現在のエピソードを短い章立てでテンポよく描き出していく。そもそも、彼女の入院が過去(1980年代)の出来事である。ルーシー自身のさまざまなエピソードが重ねられていく中で、入院中の母との邂逅の5日間が大いなる人生の分岐点となっていると感じさせる。そして、それがルーシーの人生に深みを与えている。

200ページに満たない作品でありながら、ひとりの女性の人生の深みを描き出している。読み終えて充足感に浸れる物語だと感じた。

 

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