ガタガタ書評ブログ

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

エラ・バーサド&スーザン・エルダキン/金原瑞人&石田文子訳「文学効能事典~あなたの悩みに効く小説」(フィルムアート社)-あなたのその悩み、文学が解決します

文学効能事典 あなたの悩みに効く小説

文学効能事典 あなたの悩みに効く小説

 

 

人間とは悩む生き物だ。人間関係の悩み、仕事の悩み、恋愛の悩み、病気の悩み、お金の悩み。悩みの種は尽きることがない。

何かに悩んだ時、それを解決してくれる何かにすがりつきたくなる。俗世を離れた遠い場所へ旅したり、セラピストのもとへ通って精神の安定を求めたり、街の占い師の言葉に救いを求めたりする。そんな〈救済〉のひとつに、『本を読んで現実の世界を離れる』という行為もあるのではないか。

「文学効能事典」は、サブタイトルに『あなたの悩みに効く小説』とあるように、様々な人生の悩みを解決する手助けとなる小説を紹介するガイドブックだ。

 

前書きにあたる「はじめに」の中で、著者は自分たちを〈読書療法士(ビブリオセラピスト)〉と称している。〈読書療法〉という心理療法は実際にあって、うつ病などのメンタル療法の一種なのだが、本書では〈読書療法〉として悩み適した『小説』を処方しているというわけだ。

「悪魔に魂を売り渡したくなったとき」に始まり、「わけもなく恐怖を感じるとき」に至るまで、およそ200近い悩みとそれに効く小説が並んでいる。その間にはコラムとして、「家にあるはずの本がみつからない」とか「SFが嫌い」「大評判の本が嫌い」といった“本読みに関するあるある”の話題も盛り込まれている。読んでいて面白いし、ネタによっては身に覚えのある話で胸に刺さったりする。

年代別におすすめする本も、10代~100歳以上までの年代が網羅されている。訳者のひとりの金原瑞人さんは、あとがきの中で「100歳以上までいくと、さすがに充実しすぎ」と記しているが、読者の中には日頃不摂生な生活をしていることなど棚上げして、「自分は100歳越えても生きて本を読み続ける」と考えている人もいるだろうから、そういう方には参考になるだろう。

およそ200近い悩み対して処方される本は、原書では347冊、日本語版では未訳作品や既訳であっても諸事情で外した作品を除いた202冊となっている。古典的な名作もあれば、最近のベストセラー本もある。日本人作家の本も処方されている。安部公房遠藤周作川端康成竹山道雄三島由紀夫村上春樹吉川英治の作品だ。どの作家のどの作品が、どのような悩みに対して処方されているかは、本書で確認してほしい。

いろいろな楽しみ方、読み方ができる本だと思う。

  • 最初のページからひとつひとつの悩みの処方を読んでみるのも楽しい。
  • 実際に自分が悩んでいることを目次や巻末の索引から探して、その処方を読んでみるのも良い。
  • 作家索引から好きな作家を探して、その作品がどんな悩みに処方されているか確認するのも面白い。
  • 何も考えずにパッとページを開いて、そこに書かれている悩みと処方を読むのも楽しい。

でも、この本を手にしたことでひとつ大きな悩みが生まれてしまった。それは、「この本のせいで読みたい本のリストがまたのびてしまった」ということ。きっと、この新しい悩みにも適した処方が、本書には書かれているかもしれない。