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クリストファー・ヒーリー/石飛千尋訳「プリンス同盟~プリンス・チャーミングと呼ばれた王子たち」(集英社)-王子(おとこ)はつらいよ!名も知られぬ王子たちの悪戦苦闘に抱腹絶倒!?

プリンス同盟 プリンス・チャーミングと呼ばれた王子たち

プリンス同盟 プリンス・チャーミングと呼ばれた王子たち

 

 

さて、みなさんに質問です。次の人物名を答えなさい。

Q1.舞踏会でシンデレラを見初め、姫として迎え入れた王子の名前は?
Q2.魔女によって高い塔に閉じ込められたラプンツェルを救い出した王子の名前は?
Q3.魔女の呪いで100年の眠りについた眠り姫を救い出した王子の名前は?
Q4.毒リンゴを食べて永遠の眠りについた白雪姫をキスで目覚めさせた王子の名前は?

「おとぎ話の王子に名前なんてあったのか?」と思ったみなさん。そりゃあ王子にだって名前はありますとも、だって人間だもの。しかししかし、彼らの本当の名前はおとぎ話の中にはでてきません。おとぎ話の世界では、彼らは十把一絡げに《王子》とだけ呼ばれています。そう、《プリンス・チャーミング》(魅力的な王子)とだけ、呼ばれているのです。

 

なぜ、彼らは本当の名前で呼んでもらえないのでしょう? 理由は簡単、その必要がないからです。たいていの場合、おとぎ話で《プリンス・チャーミング》が登場するのは物語の後半ですし、第一彼らは主役ではありません。口の悪い言い方をすれば、王子様とは物語の脇役、添え物みたいなもの。物語の展開上必要な登場人物ではあるのですが、最終的に主役である姫君たちを幸せにすることができれば、名前はどうでもいいのです。

なんだか、同じ男としてここまで書いてきて辛くなってきました。王子(おとこ)とはなんとつらい立場なのでしょう!

王子の辛さを感じたのかどうかはわかりませんが。著者のクリストファー・ヒーリーは、おとぎ話のプリンス像が古臭いイメージのまま長年変化していないことに気づきました。そこで、それまで表舞台に立つことのなかった《プリンス・チャーミング》たちを主役にした物語「プリンス同盟~プリンス・チャーミングと呼ばれた王子たち」を書き上げたのです。

この物語には4人の王子が登場します。シンデレラに登場する《フレデリック王子》ラプンツェルに登場する《グスタフ王子》、眠り姫に登場する《リーアム王子》、白雪姫に登場する《ダンカン王子》です。

「へぇ~、あの王子様たちってこんな名前だったんだ~」と感心したみなさん。これは正しい答えではありません。たぶん。何しろ、原作のおとぎ話の中にも名前が登場しない王子たちです。「実はこんな名前でした」なんてことがあるはずない。この名前は、おそらくクリストファー・ヒーリーの創作だと思われます。なので、お友達とかに「シンデレラに出てくる王子の名前ってさ、フレデリックっていうんだよ」などと知ったりぶりして話すのは控えた方がいいと思います。

あ、肝心な本書の内容を書く前に長々と別の話を書いてしまいました。これ以上長く書いているとキリがないので内容紹介と感想は駆け足で。

本書は、4人の王子にスポットをあてた物語です。フレデリック王子は過保護に育てられたお坊ちゃまで、大人しくて臆病者です。身体が大きく粗野で乱暴者のグスタフ王子は、ラプンツェル救出後のあれやこれやにイライラしていて、なんとか両親や兄たちに自分を認めさせたいと思っています。

眠り姫ブライア・ローズとの結婚を控えたリーアム王子は、自分が国民のための英雄であると自負しています。結婚について思い悩んだリーアムはブライア・ローズと話をしますが、そこで彼女のとんでもない一面を知ります。そして、彼女の画策によって国民から信頼を一気に失墜し、彼は逃げるように国を後にします。

白雪姫と幸せな結婚生活を送っていたのがダンカン王子です。この王子、とにかく“ド”がつくほどの天然キャラ。白雪姫も相当な不思議ちゃんなのですが、それに輪をかけた不思議ちゃんがダンカン王子なのです。なにしろ自分には〈ラッキーパワー〉があって、ピンチになるとラッキパワーが発動して守ってくれると信じている。そして極端な方向音痴です。

そんなデコボコな王子たちが集まれば事件が起こらないはずがない。4人の王子に4人の姫、そして彼らを取り巻く魔女や山賊、巨人にドラゴンにドワーフトロールとファンタジー世界の定番キャラたちが入り乱れて展開する物語は、もはやドタバタ喜劇です。4人の王子たちの一挙手一投足に、ハラハラしイライラし、ドキドキしワクワクし、ワハハと笑いムムムと眉をしかめる。そして時折呆れたため息。それがこの物語です。

さて、そんなデコボコ、ドタバタな王子たちは最後ハッピーエンドを迎えられるのでしょうか? それはぜひ本書を読んでみてください。

ただ、最後に申し添えておくならば、本書には第2弾、第3弾の続編があると訳者あとがきに書かれていたことは記しておこうと思います。

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