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ニコルソン・ベイカー/岸本佐知子訳「ノリーのおわらない物語」(白水社)-子どもの想像力、子どもの行動力がたっぷりつまった愛情いっぱいの物語

ノリーのおわらない物語 (白水uブックス)

ノリーのおわらない物語 (白水uブックス)

 

 

エレノア・ウィンスロウ(ノリー)は9才の女の子。おかっぱの髪は茶色で、目も茶色。将来の夢は歯医者さんかペーパーエンジニアで、ペーパーエンジニアというのは飛び出す絵本や飛び出すバースデーカードをデザインして作る人のこと。

 

ニコルソン・ベイカー「ノリーのおわらない物語」は、ノリーの想像力にあふれた毎日を描き出す。ノリーは、両親と2才の弟の4人家族。弟の名前はフランク・ウッド・ウィンスロウというが、みんなは“チビすけ”と呼んでいる。ノリーたちは、アメリカからイギリスに引っ越してきて、ノリーは小学校に通っている。

ノリーは想像力の豊かな子どもで、いつもお話を考えている。「せんすの話」とか「死の雨の話」とか、そういう話。ノリーは、面白い体験をしたり、素敵な場所に行ったりすると、物語を作りたくなる。

ノリーの学校生活では、いろいろなことが起きる。パメラといういじめられっ子がいて、ノリーは彼女と友だちになる。パメラは、第5学年の年齢だけど第6学年に編入している。でも、それがいじめの理由になっている。ノリーには、それが理解できない。それのどこがわるいのだろうと考える。だから、パメラをいじめる側ではなく友だちになる側になった。だけど、周りのみんなからはノリーが変な子あつかいされている。仲良しのキラからも「パメラと口をきくと、あなたもきらわれちゃうよ」と言われる。ただ、キラはノリーが誰と仲良くしてても嫉妬して、いつも二人でいないと気がすまない子だから、そこはノリーがキラを「ちょっとヤダな」と思うところだ。

ノリーのモデルとなったのは、著者ニコルソン・ベイカーの娘アリスである。彼女が9才のとき、本書のようにベイカー一家はイギリスに1年間暮らしていた。ニコルソンはアリスを学校に迎えに行った帰りに、車の中で彼女の話を聞き、その話をもとに物語を書いた。次の日も、その次の日も。アリスが話してくれるその日の出来事を聞き、物語に落とし込んでいった。そうして、本書「ノリーのおわらない物語」が生まれた。

「ノリーのおわらない物語」からは、子どもならではの溢れるような想像力が感じられる。ニコルソンがアリスから聞いた話をどの程度加工して物語にしているのかはわからないが、これだけの面白い物語となっているからには、ベースとなっているアリスの話も相当に面白いエピソードなのだろうと思う。

「ノリーのおわらない物語」が書かれて出版されたのは1998年のことで、およそ20年前になる。ということは、ノリーのモデルとなったアリスも今ではアラサーの大人の女性ということになる。この素敵な物語の主役となった少女が、どんな大人に成長したのか興味深いと感じると同時に、永遠に子どものままのノリーで記憶をとどめておいた方がいいんだろうなとも感じている。

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