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犬猫みなしご救援隊/金子二三夫写真「鼓動~感じて欲しい小さな命の重み。」(書肆侃侃房)-この本の発行日は2012年3月11日。その日から5年、震災から6年が過ぎた今、救援隊の活動はまだ続いています。

鼓動 ―感じて欲しい小さな命の重み。

鼓動 ―感じて欲しい小さな命の重み。

  • 作者: 犬猫みなしご救援隊,写真/金子二三夫
  • 出版社/メーカー: 書肆侃侃房
  • 発売日: 2012/03/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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まず最初に注意しておいた方がいいだろうと思います。

本書には、2011年3月11日の東日本大震災とその後の福島第一原発事故により被災地に取り残された動物たちの写真が数多く掲載されています。救援隊の手で保護され、飼い主さんや一時預かりの方に引き取られて幸せを取り戻した動物たちがいる一方で、過酷な生活環境で病気になったり怪我をしたボロボロの身体になってしまった動物や命を落とした動物たちも数多くいます。写真には、そのすべてが記録され掲載されています。正直、見るのがつらい写真もあります。思わず目を背けてしまう悲惨な状態を写した写真もあります。

本書は、広島に本部を置いて動物の保護活動に尽力されているNPO法人『犬猫みなしご救援隊』東日本大震災被災地における犬猫保護活動の記録です。

 

本書の発行は、巻末の奥付によれば2012年3月11日。震災からちょうど1年後のことです。その1年間に救援隊では、飼い主から保護依頼や被災地での活動によって、総計でおよそ1200頭の動物を保護し、元の飼い主のもとへ届けたり、里親家庭に引き取ってもらったり、自分たちのシェルターで保護したりしてきました。

保護活動のはじまりは、誰に頼まれたわけでもありません。阪神大震災のときも、新潟地震のときも、著者(救援隊代表の中谷さん)は動物保護の必要性を感じていました。でも、実際に活動することができなかった。救援隊にしてみれば、災害時の動物保護活動は積年の宿題事項だったのです。そして、3月11日が来た。もう後悔はしたくないと救援隊は迷うことなく被災地へ向かったのです。

まだ混乱した被災地に「犬猫を保護しに来ました」と入っていっていいのか。被災者から拒絶されるのではないか。救援隊にはそんな迷いもあったといいます。しかし、活動の目的を告げると被災した方々からは、

「来てくれてありがとう。どうか、この町の犬や猫を助けてやってくれ」
「たとえ犬や猫であっても、生きていてくれたらそれだけでいい」
「私たちは今、全てを失った。大切な家族でさえも。だけど、もし他に生きていてくれるものがあれば、どうか、私たちに代わって面倒をみてほしい。助けてやってほしい」

と告げられるのです。

救援隊の活動は、宮城の被災地から福島の被災地へと移っていきます。福島第一原発事故の避難区域での保護活動です。

事故後、原発20キロ圏内は避難区域となり住民は全員区域外への避難を余儀なくされました。当初、住民の多くは数日で自宅に帰れると考え、飼っていた犬や猫は自宅に置いて避難します。しかし、避難生活はそのまま続き、帰宅はできなくなってしまいました。結果、動物たちは取り残されたのです。救援隊は、無人となった町で犬や猫の保護を行います。野良化した犬や猫は捕まえて保護し、つながれたままの犬や猫には十分な餌と水を与えます。しかし、2011年4月20日に避難区域への立ち入りが禁止となります。救援隊も例外ではありませんでした。

私事になりますが、私の母親は原発20キロ圏内にある町の出身です。親戚には、今でも避難生活を送っている方がいます。私のいとこの旦那さんの実家では、犬を飼っていました。我が家のアイドル・ラムの父親にあたるビーグル犬です。その家族も、他の住民と同様に数日で家に帰れるつもりで、犬を自宅に置いて避難しました。幸い、救援隊と同様の保護活動を行っていた別の団体に保護していただき、新しい里親さんに引き取られたそうです。

【余談】
この保護されたビーグル犬ですが、その後飼い主さんが里親さんのところに引き取るつもりで会いに行ったそうです。そうしたら、あまりに里親さんの住み心地が良かったのでしょうか、元の飼い主についていこうとしなかったとのこと。飼い主さん、「こちらのお宅でコイツが幸せに暮らせるなら」と引き取りを諦めたんだとか。なお、そのビーグルは大切に育てられて、今でも元気に生きています。ウチの犬の親になるので、年齢としては18歳くらいになるかもしれません。

救援隊のように被災地で動物たちの保護活動を行ってきた団体は数多くあります。彼らの活動によって救われた命がたくさんあります。でも、残念なことに保護の手が届かなかったり、間に合わなかったりして失われた命も数知れません。

東日本大震災から6年以上の歳月が過ぎました。まだ十分とは言えませんが、地震津波によって破壊された街並みも震災前の状態に戻り、被災者もほぼ元の生活を取り戻してきています。人間が生活を取り戻してきたことで、救援隊の活動も終息したのでしょうか。救援隊のホームページや代表の中谷さんのブログでは、その活動はまだ続いていることがわかります。活動のすべてが被災地の動物保護ではありませんが、栃木にあるシェルターではまだ保護動物の飼育が行われています。

気づけば6年も過ぎてしまったのだな、と思います。私たちの中で、東日本大震災は遠い記憶となってきたと思います。でも、まだ避難生活を送っている方があり、完全に元に戻るには長い時間が必要です。今回、本書を読んで、改めて震災の記憶を風化させてはいけないんだと感じました。

 

ゴン太ごめんね、もう大丈夫だよ!

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待っている犬  東日本大震災で被災した犬猫たち

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のこされた動物たち――福島第一原発20キロ圏内の記録

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のこされた動物たち 福島第一原発20キロ圏内の記録

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待ちつづける動物たち

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のこされた動物たち待ちつづける動物たち(2冊セット)

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同伴避難

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