タカラ~ムの本棚

読んだ本の感想などをボチボチと綴るブログ

【書評】施川ユウキ「バーナード嬢曰く。(3)」(一迅社)-まさかのアニメ化で注目の「ド嬢と仲間たち」は今回も図書館で読書談義に花を咲かせる

10月からスタートのアニメも評判(になっているのか?)の「バーナード嬢曰く。」の第3巻が出た。発売日にさっそく購入し速攻で読みましたとも。

 

今回もド嬢たちは元気だ。相も変わらず図書館に入り浸って、読んだ本読んでない本関係なく読書談義で盛り上がる。「本を開いても眼が文字列をフラフラ追いかけるだけで何も頭に入ってこない。スランプかな」と嘆くド嬢(町田さわ子)に対し、「むしろ本来の姿っぽい」と辛辣な遠藤。神林しおりは相変わらずSFを熱く語り、長谷川スミカは地味に存在している。

第1巻では、グイグイと距離を詰めてくるド嬢の強引なところに辟易した感じながら、好きなSF本の話では熱くなりすぎて逆にド嬢を引かせていた神林だが、第2巻の「一人旅」のエピソード以降、ド嬢に対する気持ちが変化したようで、第3巻ではついついド嬢が気になってしまう。基本、ド嬢は天然キャラなので、感情もストレートに顔に出たり態度に出たりする。そういうところが愛すべきところなのだが、神林もド嬢のそういうところにちょっと胸キュンしちゃっているようだ。

さて、古今東西さまざまな作品を題材にしてエピソードを展開し、読んでいて「読みたい本」が増える(ややこしい)本作であるが、第3巻でも興味を引く作品が続々と登場する。

オープニングのエピソードは、死について考えるド嬢。山田風太郎「人間臨終図巻」に感化されて死について考えるようになったというド嬢。そんな彼女に、スミカはトルストイイワン・イリイチの死」を、神林は長谷敏司「あなたのための物語」を薦めるのだが、互いの紹介本の共通項で盛り上がった神林とスミカは、ド嬢を完全に置き去りにしてしまう。

暑い夏の日にひと気のないプールサイドに寝転んで本を読むド嬢と神林のエピソードもいい。もっとも、神林が読んでいるグレッグ・イーガン「ゼンデギ」はいいとして、ド嬢が読んでいる本にはちょっと受けた。何を読んでいたかは本書で確認してください。

最近各所で開催されて、参加者も増えてきているという読書会をネタにしたエピソードもある。ただ、ド嬢が想像する読書会はかなりの誤解があるようだ。もっとも、私も読書会には参加した経験がないので、もしかするとド嬢が想像しているような怪しい会なのかもしれないが(そんなわけない)。

第3巻ラストのエピソードは吉村昭羆嵐」を読んで興奮したド嬢が、作品の内容について熱く語るのと、これも今流行りのビブリオバトルを絡めた話。支離滅裂ながらも「羆嵐」がいかに面白い小説だったかを、熱く熱く語るド嬢に、スミカがビブリオバトルに出場しないかと持ちかける。ド嬢は「ムリムリ」と拒むが、一応シミュレーションしてみようと、改めて「羆嵐」について語ろうとするが、改まって話そうとすると緊張してうまく喋れなくなってしまう。そんな彼女の姿を見て、スミカは本当に聞き手に興味を持たせるレビューとは何かを実感するのである。

最後になるが、「バーナード嬢曰く。」といえば読書あるあるネタなので、第3巻に出てきたあるあるネタからひとつ。

その内買おうと思ってた本の帯がよくわからないB級タレントの推薦コメントに変わっていて
買う気なくしたー!!

よくわかる(笑)

 

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ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)

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