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【書評】ドナ・タート「ゴールドフィンチ(2)」(河出書房新書)−母を失った少年の前に、失踪中だった父が突然現れた。少年は、父に引き取られラスベガスで暮らすことになるのだが…

ゴールドフィンチ 2

ゴールドフィンチ 2

 
ゴールドフィンチ 2

ゴールドフィンチ 2

 

美術館での爆破テロ事件に巻き込まれて母親を失った少年テオが、同じ現場に居合わせた老人ウェルティから託された「ゴールドフィンチ」という1枚の絵とともに様々な困難に巻き込まれつつ成長していく2014年ピュリッツァー賞受賞の大長編小説の第2巻。

 

爆破テロ事件後、親友のアンディ・バーバー家で暮らしていたテオの前に、アル中となって母親に暴力を振るい家を出て失踪状態になっていた父親が愛人を連れて突然現れ、テオを引き取ってラスベガスで暮らすことになったのが第1巻のラスト。第2巻では、父と愛人とともにラスベガスで暮らすことになったテオの成長物語が描かれる。

ラスベガスで暮らすことになったテオだったが、かつて彼と母を捨てた父親とその愛人との生活は、当然ながら平穏とはいかない。慣れない土地で頼れる人もいないテオは孤独の中にいる。

それでもテオは、ボリスという少年と親友になる。唯一の友人であるボリスとの出会いが、テオの将来にとって大きなターニングポイントとなっていく。思春期の少年にありがちな、ちょっと不良に憧れる好奇心が、彼らに酒の味と女の子との関係を教え、互いのちょっと複雑な家庭事情もあって、ふたりは不良少年への階段を昇っていく。

ボリスとの出会いで多少は救われつつあったテオだが、その全てを父親がまたぶち壊すことになる。彼は、自らが抱えた多額の借金を返済するために、テオの母親が残したお金を手に入れようとする。だが、あらかじめそうなると予見していた母親の画策で、父親は金を手に入れることができない。そして、彼には悲劇的な末路が待ち受けている。

第1巻で提示された伏線の多くは、まだこの段階では回収されていない。ウェルティから託された「ゴールドフィンチ」にはどういう意味があるのかは、まだこれから明かされることになる。

本書の後半、テオは父の愛人の飼い犬だったポッパーを連れて、グレイハウンドを乗り継いでニューヨークへ戻り、ホービーと再会して暮らしはじめる。

第2巻は、第3巻、第4巻へと続いていく物語の中でターニングポイントであるとともに、テオという少年が大人へと成長していくビルドゥングスロマンである。新たな出会いがあり、今後の展開を左右するであろう事件のエピソードがあり、そしてテオ自身の心境の変化がある。

全4巻の長丁場だけに、第2巻は少し展開が足踏みするかと思ったが、読み始めると今回もページをめくる手が止められなくなってしまった。次はいよいよ第3巻。起承転結で考えれば「転」にあたるのだろう。これまでの伏線の回収を含め、物語がどのような展開を見せるのか楽しみである。

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