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【書評】ドナ・タート「ゴールドフィンチ(1)」(河出書房新社)-爆弾テロで母親を失った少年は、1枚の絵とともに波乱万丈の運命を生きる。大長編小説の幕開けとなる1冊

ゴールドフィンチ1

ゴールドフィンチ1

 
ゴールドフィンチ 1

ゴールドフィンチ 1

 

表紙を開くと1枚の絵が眼に飛び込んでくる。カレル・ファブリティウス『ごしきひわ』(The Goldfinch,1654)と記されている。この物語の鍵となる重要な絵だ。

ドナ・タート「ゴールドフィンチ」は、2014年度ピュリッツァー賞を受賞した大長編小説である。35カ国で翻訳出版され、世界中で300万部を超えるベストセラーとなっているとのこと。日本語版は全4巻で、本書はその第1巻にあたる。

 

物語は、主人公である“ぼく”(シオドア・デッカー、通称はテオ)が滞在するアムステルダムのホテルの一室からはじまる。彼がなにか重大な事件に巻き込まれているらしいことが記されているが、この時点ではもちろんその事件の内容は明かされない。

テオは、子供の頃に美術館で起きた爆弾テロで母親を亡くしている。その事件が、彼にとってのトラウマとなっていると同時に、そのときに起きた出来事が彼の後の人生を大きく変えていくことになる。母親とともに爆弾テロに巻き込まれたテオは、同じく巻き込まれた老人ウェルティから1枚の絵を美術館から持ち出すように頼まれる。カレル・ファブリティウスが描いた「ごしきひわ」と題する小さな絵だ。母親の死後、親友のアンディ・バーバー家族のところへ住まわせてもらうことになったテオは、少しずつ時間が経過していく中で、美術館で絵を託された老人が話してくれたホービーという人物の家を訪ねる。そこでテオは、ひとりの少女と出会う。ホービーと少女との出会いと交流、バーバー一家との暮らしの中で、テオは少しずつ母親を亡くした傷心から回復していく。そして、バーバー一家とメイン州での休暇を過ごすことになるが、そこに突然家を出ていったはずの父親が愛人とともに現れる。ここから、テオの人生は大きく変化していくことになる。

第1巻に描かれるのは、美術館テロによる母の死、ウェルティという老人から託されたファブリティウスの「こしきひわ」という絵、彼を支えてくれる友人家族との平和な暮らしとその平和を破壊する父親の存在など、物語全体のプロローグ部分だ。爆破テロはなぜ起こされたのか。「こしきひわ」という絵にはどういう意味があるのか。テオの人生はこれからどう展開していくのか。そして、本書冒頭に描かれる現在のテオの置かれている状況に至るまでに、どのような事が起きるのか。いわば、第1巻の本書は物語の全体の大いなる前フリのようなものである。

著者のドナ・タートについては、本書が初読みである。本書に記載のプロフィールによれば、1992年の「シークレット・ヒストリー」でデビュー以降、2002年に第2長編「ひそやかな復讐」を刊行し、2013年に第3長編として本書「ゴールドフィンチ」を刊行と、長編刊行ペースはほぼ10年ごとと実に家作な作家であるが、本書が2014年のピュリッツァー賞カーネギー賞などの文学賞を受賞するなど評価が高い。本作については、まだ第1巻を読み終わったばかりだけど、先が気になっている。第2巻、第3巻と話がどのように展開して、第4巻でどういうラストを迎えるのか。大長編ながら一気読み必至の作品という予感がする。

 

ゴールドフィンチ 2

ゴールドフィンチ 2

 
ゴールドフィンチ 2

ゴールドフィンチ 2

 
ゴールドフィンチ 3

ゴールドフィンチ 3

 
ゴールドフィンチ 3

ゴールドフィンチ 3

 
ゴールドフィンチ 4

ゴールドフィンチ 4

 
ゴールドフィンチ 4

ゴールドフィンチ 4

 
ゴールドフィンチ 1?4合本版

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